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テスト期間に入り、校内の空気はピリついている。
皆、出来るだけ会話を避けるようになっていた。というのも、不用意に発作を起こして時間を無駄にしたくないからだ。刺激し合わないように、皆が一様に細心の注意を払っていた。
そして、滞りなく全てのテストが終わった。
僕は歌の自主トレに励んだせいで、テストの出来は最悪だ。
「終わった~! 郷田、どうだった? 遊びに行くべー」
藤がニヤケ顔で僕の前の席にやって来た。
「最悪だよ、答案返されたら泣いちゃうかも」
何の気なしにそんなことを言うと、藤が「マジ? じゃあ、その時に郷田の発作が見られるな」と無邪気な笑顔を見せている。
やべぇ~……墓穴掘ったぁ~……
僕は誤魔化すように「そうかもな」とヘラヘラ笑った。
内心焦ったが、実のところ僕はもう音痴ではない。だからいつ発症してもおかしくない状況なのだ。
平和的に、ここは空気を読んで悲愴型でお願いしたい。
四分の一の確率。半分の半分!それが四分の一だ。
僕は今か今かと、自分の感情の起伏に敏感になった。
「よし、ボーリング行くべ~! 杉本ちゃん、静香も」
「行きた~い♪ボォ~リング~~静香も~行こぉ~~一緒にぃ~♪」
相変わらず愉快型の杉本は楽しそうに歌いだす。
静香は「うん。行こう~」と微笑んだ。
結局この日は、スプリットを倒した静香が発作を起こし「やったぁ~~~♪ウハウハいえ~い♪」と、可愛い歌が聞けたこと以外、特別なことはなかった。
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