◇第5章◇ ぼくの運命の先輩は。

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「ぼっ、ぼくが聖先輩と一緒にいたのが気に入らないんですかっ⁈」  必死に言うと、カクライ先輩はピクンと片眉を反応させた。 「……全部見てたぜ。お前らのこと。ずいぶんと仲良くしてたじゃねぇか。お前がいる書庫室に入ってく聖先輩のことも見たしよ。一体、ナニしてたのかなぁ」  うわー! やっぱりバレてたんじゃん! 聖先輩のバカッ! 「お前みたいにトロくて冴えねぇ奴があの人に好かれて、なんで神秘的な美しさを持っててどうしようもなく人を惹きつけちまう俺が好かれねぇんだよ」 「ず、ずいぶんと自己肯定力高めなんですね」 「ほんと、世の中不公平だよ。ここまでくるのにどんだけ辛い思いしたか。どんなに努力したって、結局報われない。何の努力もしてねぇお前があの人の隣でヘラヘラ笑ってんの見てると、イライラすんだよ。歩太先輩まで味方に付けててよ。だから俺は、あの人たちが悲しむことをしようと思う」  カクライ先輩の手が、ぼくのネクタイを外した。  周りの男たちは、何だか鼻息が荒くなっている。「よく見ると結構可愛いじゃねぇか」と誰かがぼそっと呟いた一言を聞き逃さなかったぼくは、サーッと血の気が引いていった。   「あの、ぼくは、もしかして『まわされる』のでしょうか……?」 「よく分かってんじゃねぇか」  伊達に漫画ばっかり読んでません……!  カクライ先輩があっという間にぼくのシャツのボタンを外した。  インナーも捲り上げられ、2つの突起を外気に晒される。男たちはぼくのそれを見ながらくっくっと笑っている。 「あ──っ!! ヤダヤダ! だめですよっ! こんな事してっ、バレないとでも思ってるんですかっ⁈ 即退学ですよ⁈」 「望むところだな。それに俺が疑われたらこう言うさ。『友達が無理やりされてたので、カッとなってその仕返しにヤっちゃいました』って」  ぼくはこっちに向けられているスマホに視線を移す。  あの中に、さっきの画像が入っている。それをなんとか消去したいところだが……体が動かせない。かろうじて自由なのは、顔と膝から下だ。  ぼくは足をバタバタとして逃げようと試みるが、もう一人の男にそこも押さえつけられてしまった。  そうだ、スマホ! ポケットの中に入っているスマホに向かって叫んで、誰かに電話をかけてもらう⁈  そう考えていた矢先、抵抗して腰をくねらせた拍子にスマホが落ちて転がった。足元にいた男はそれをサッと拾い上げる。 「だっ、誰か……っ」  絶望的な状況の中、ぼくは蚊の泣くような声を発する事しかできない。  カクライ先輩は、ぼくのベルトを外しながらニヤリと笑った。 「お前の恥ずかしい姿が広まったら、まともに外なんて歩けなくなるだろうなぁ。誰かがコピーしたやつをまた誰かがコピーして、どんどん拡散されていくんだぜ。そしたらお前、乙葉にも見放されるだろうな」  ハッとして、ぼくはカクライ先輩に問う。 「乙葉の名前も、知ってるんですか?」 「……うるせぇな。そんな事訊いてられる余裕、まだあんのかよ」  カクライ先輩の手が、とうとうズボンのチャックを下ろし始める。  乙葉を知ってて、聖先輩も知ってる。  歩太先輩は生徒会長だから、知っていても違和感はないけれど……もしかしたらこの人……?
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