◇第2章◇ センパイとお付き合いすることになりました。

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 次の日。朝イチで歩太先輩にメールを打ったが、今日も念の為学校を欠席するとの事だった。  歩太先輩のいない正門を通るのは久々だ。 「よぅ聖。おはよー」  ぴく、とその名前に反応して振り向くと、聖先輩が仲良くしているクラスの親友に肩に手を回されていた。  聖先輩は挨拶を返すこともなく、寝ぼけ眼といった感じでぶすっとしながらフラフラと歩いている。  ぼくと目が合った聖先輩は何か言おうとしたが、先輩の友達の方が口に出すのが先だった。 「あれ、今日ブレザーはどうしたの?」  ドキッ!  聖先輩は今日、上着は羽織っておらず、キナリのセーターのみだ。グリーン色の制服の中に一人だけその格好だから余計に目立つ。やはり昨日の汚れは落ちなかったようだ。  聖先輩は友達の問いかけに含みのある笑いをして、わざとぼくの方を向いて言った。 「なんか、ミルクこぼされちゃって」  なっ! なにーー!  ボボボ、と赤面するぼく。 「ふぅん? 聖ん家ってペット飼ってんだっけ?」 「最近飼い始めた。猫っぽいの」 「はは、ぽいってなんだよ」 「いろいろ躾しないとまたミルクかけられそう」 「あぁーまぁ最初は大変だよな。俺もチワワ飼ってるけど、初めて家に来た時はそりゃあもうイタズラばっかりで……」 「聖せんぱぁい、グッドモーニングです! ちょっとよろしいでしょうかぁぁ?」  ぼくは聖先輩の腕を引っ張って無理やり人気(ひとけ)のない所へ連れていく。 「ちょっとちょっと!! 何言ってるんですか! ぼくとの事はどうか秘密でってあんなにお願いしたじゃないですか!」 「お前の事は言ってないじゃん。ミルクこぼされたって言っただけで」 「だからそのミルクとかっ! やめてくださいよ! 勘のいい人だったら気付いちゃうかもしれないですよ?!」 「ていうか昨日から疑問に思ってたんだけど、なんでそんなに俺と付き合い始めた事隠したいの?」 「えっ」 「バレたらバレたで俺は別にいいと思ってるけど。お前は嫌なの? 周りの目とかが気になる?」  聖先輩は訝しむようにこっちを見る。  ぼくはタラタラと冷や汗をかきながら言い訳をした。 「そ、そりゃそうですよ。もしバレたらからかわれたり、いじめられたりしちゃうかもしれないし。そしたら先輩、責任取ってくれるんですか? ぼくがクラスでボッチになって楽しく学園生活送れなくなってもいいんですかっ?」  本当の理由は別にあるけど、今言ったこともあながち間違いでは無い。  聖先輩と付き合ってるだなんて噂が流れたらクラスメイトはどんな反応をするのか。  聖先輩は他校の女子からも人気があるみたいだから、この街じゃちょっとした有名人なんだろうし。  なるべくなら、事が大きくなる前にお付き合いを解消したいところだ。  聖先輩はまたじっとぼくを見つめながら言う。 「もしお前がそんなことになったら、俺がちゃんと助けてやるのに。まぁでも、お前が嫌ならお前に合わせるよ」  そんなふうに真っ直ぐ言われると、胸がドキッとしてしまう。  そういう所が、きっと女の子のハートをメロメロにしちゃうんだろうなぁ。 「お願いしますね」と念を押して昇降口で別れようとした時に、聖先輩はもう一度ぼくを引き止めた。
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