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ぼくはどうしようかと逡巡した挙句、フェイクを交えながら話すことにした。
相手は他校の女の先輩ってことにして、高橋違いの先輩に告白をし、OKをもらってしまったのだと。
「待って待って、どうして告白する相手を間違うだなんて事が起こるの」
「だから、相手が隠れてて気付かなかったんだよ。その……壁、の向こう側に」
「は? 壁?」
「いや、違う……カーテン、の向こう側……」
「カーテン? 他校の人なんでしょう?」
「えっと、ちょっと具合悪くなっちゃったその人が学校のベッドで寝てて」
「なんであんたが他校の保健室にいるのよ」
どうにもこうにも嘘が吐けなくなってしまったぼくは、結局本当の事を話してしまった(というかぼく、嘘吐くの下手すぎるだろー!!)。
姉ちゃんは、ぼくが男と付き合っているのだと分かると、なんか鼻息を荒くして興奮しだした。
「それはいわゆるボーイズラブってやつね! 大丈夫よ、私は偏見なんて全く無いからね!」
張り切ってぼくと握手する姉ちゃんはきっと、BL漫画も好きなんだろうなぁと悟った。
「よく分かったわ。本当は歩太会長が好きだけど、そのお友達の聖くんとお付き合いしてるのね? で、周りには付き合ってることは内緒にしてくれとお願いしてる、と」
聖先輩とキスやエッチな事をしてしまったというのは流石に隠しておいた。
こくこくと頷くと、──バチン!!
すぐに姉ちゃんのビンタが飛んできた。
「痛いなっ!! いきなり何すんのッ?!」
「最低よ、バカ! あんたその二人の気持ち、ちゃんと考えてるわけ?!」
ぼくはジンジンする頬に手を添えながら反論した。
「考えてるよ! だからこうして悩んでるんじゃん。聖先輩を傷つけたくはないし、歩太先輩にもこの事はバレたくはないし」
「あんた、もしその聖って人と別れられたとして、その後会長とすんなりお付き合いできると思ってるわけ?」
そんな風に言われ、ぼくはグッと奥歯を噛み締めた。
歩太先輩と付き合えるかどうかは分からない。
しかし受け入れて貰える可能性の方が高いだろう。なんてったってぼくは、歩太先輩のお気に入りだから。
「たぶん、大丈夫だと思う。歩太先輩にとってぼくは特別なんだなって思える発言もされたし」
「違う違う。そういう事じゃないわよ。ほんと何も分かってないわね」
姉ちゃんはあいたた、と頭を抱えるのでムッとする。
「なに? どういう事なの?」
「逆を考えてごらんなさい。雫が歩太くんに告白されてお付き合いを始めた。けど歩太くんは他に好きな人が出来たとか何とか言って、急に雫を振る。もちろん雫は大ショック。そして気付けば、歩太くんに新しい恋人が出来ていた。その相手は自分の大親友の聖くん。どうこれ? こんなの納得できる?」
「全然出来ませんっ……!!」
ぼくは頭を抱えながら床にうずくまる。
そんなの、ショック過ぎて学校通ってる場合じゃなくなる。そんな事になったらもう聖くんとは親友やめようかとも思ってしまうだろう。そして、しれっと親友と付き合いだした歩太くんの事も大嫌いになるはずだ。
「聖先輩と歩太先輩の仲を壊すつもり?」
「やだっ! それは絶対に嫌です!」
「けどあんた、まさにそうしようとしてるじゃん」
「ううう……」
姉ちゃんの言葉が重石のように背中にのしかかる。
「じゃあ一体、どうしたらいいんだ……」
「もし聖先輩が好きじゃないんだったら速攻別れる事。で、歩太先輩には……そうねぇ、まぁ一年くらいはあかせて、改めて告白してみたらいいんじゃない?」
「い、一年も?! その間に歩太先輩が誰かに取られちゃうかもしれないじゃん!」
「そうなったら縁が無かったってことで、諦めなさい。ていうかその前に、本当に歩太先輩と付き合える可能性はあるの?」
「あるある! 勘だけど、なんとなくいける気がするんだ」
「ふぅん?」
姉ちゃんはあんまり信じていないようだ。
そしてなぜか徐に、飾り棚の中から手乗りサイズのうさぎとクマのぬいぐるみを持ってきて、それぞれを手に持って左右に振った。
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