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「ひ、聖先輩?!」
よ、と軽く挨拶をし、不敵な笑みでこちらを見下ろすその人は聖先輩だった。
「何してるんですかっ! 先に帰ったのかと思ってました」
「ん、なんか気が変わって」
「ちょ、ちょっと」
聖先輩はぼくの頭を持って顔を近付けてきたので、慌ててその胸を押した。
「だから、何してるんですかっ」
「嫌?」
片方の手首を持たれながら射抜くような目でじっと見つめられると、ぼくは動けなくなる。
ここは最上階だから、外から見られることはないだろうけど。
いやいや、と一瞬緩んでいた気をぐっと引き締める。
「ダメ、ですよ。こんな場所では。ぼく、仕事やっちゃうのでそこで待っててください。終わったら一緒に帰れますから」
子供に言い聞かせるみたいに言って、ぼくは本棚に並べられた本を何冊か手に持つが──
バサバサっと手の中の本が全て床に落ちる。
聖先輩がまた、ぼくを背後からきつく抱きしめてきたからだ。
「ん、せんぱ……っ」
そのままくるっと体を反転させられ、本棚の側面に押し付けられながら強引にキスをされてしまう。
舌を差し入れられたので、ぼくは驚きながらもそれに従順する。
(聖先輩、どうしたんだろ……こんな風に強引に)
聖先輩は、ぼくが嫌がる事をしたくはないと言ったはずだ。
なのにいま目の前にいる人は自分勝手で、ぼくを食べちゃうくらいの勢いで舌を縦横無尽に動かしながら中を味わっている。
ぷはっ、と水面から顔を上げた瞬間と同じように、聖先輩の唇が離れて行った後に大きく息を吸い込んだ。先輩の唇はツヤツヤに艶めいていて、顔もしっかりとピンク色に染まっていた。
「悪い。なんか今日、お前を酷くしたい気分」
「えっ……?」
「お前が嫌だって言っても、きいてやれないかも」
聖先輩はぼくの首筋に、ちゅ、ちゅ、と優しくキスを落として行きながら、ぼくのセーターをめくってシャツのボタンに指をかけた。
ぼくは慌ててその手を掴んで、止めさせようとする。
「なっ、一体どうしたんですかっ?! ダメですよ、こんな場所で」
「さっき、誰見てた」
聖先輩はぼくの両手をいとも簡単に片手で包み込み、自由を奪って冷たく言う。
ぼくの手を使えなくしている間、片手で器用にぼくのシャツのボタンを全て外し終えてしまった。
「だ、誰って?」
「窓から下覗いてただろ。誰の事見てた」
「ぁんっ!」
両手を頭より上に高く固定され、胸の尖りを舌でペロリと舐めあげられて、ぼくは上擦った声を漏らした。
もしかして聖先輩、ぼくが歩太先輩の事を見ていたのに、嫉妬して──?!
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