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ズボンの上から触れている聖先輩の手は、指を下に向けた状態でじっとしたまま動かなかった。
それがかなりもどかしい。勝手にぼくのお腹の奥がキュッと閉まったり開いたりしている。
ぼくの手は頭上で固定されたままだ。
できれば早く、その手を動かしてもらいたい。
口から漏れた唾液を拭うことも出来ぬまま、ただ聖先輩の目を見つめることしかできない。
「あっ……ん、ん……」
「どうしてほしい?」
「あっ……聖先輩……ッ」
「ちゃんと言わないんなら、ずっとこのままだけど」
「そ……んな……っ!」
鬼!! そんなの無理!!
ゴシゴシと上下にこすって欲しい。でもそんな破廉恥な事、ぼくの口から言えるわけない!!
聖先輩にじっと見つめられながら逡巡する。
恥を捨てて、口にするか。それともここはどうにか先輩から逃げ出して、トイレに駆け付けてそこで抜いてくるか。
冷静に考えてみれば、正解はもちろん後者だろう。
でも頭が沸騰して全然冷静になれない。
どうすればいいんだ。どうすれば──
答えを見出す前に、ジンジンと熟れるそこの我慢の限界がきたぼくは、自ら腰をゆっくりと上下に揺らし、聖先輩の掌に擦り付けてしまった。
「はぁっ、っ……、……」
聖先輩の手はおっきくて、ぼくのを根元まですっぽりと包み込んでくれている。
親指の付け根あたりのふわふわした部分に当たるように動かすと、じゅわっと腰全体が蕩けそうになる。
恥ずかしい! 変態なことしてる!
そう頭では分かっているのに、ぼくは腰の動きを止められない。
「んん……ッ」
「……っ」
眉を八の字にして先輩を見つめると、聖先輩は気恥しそうに唇を軽く噛んでから、ぼくがまさにやって欲しいと思っていた事をしてくれた。
その掌を上下にさすりながら、ぼくに噛み付くようなキスをする。
「ふぁ……っ!」
「お前っ、エロ過ぎるだろ……ッ」
熱っぽく言いながらぼくの手の拘束を解き、両手でぼくのベルトを外す。
すぐさまパンツの中に手を突っ込んで直に触った。
強すぎる快楽に、ぼくは先走りの蜜を大量に吐き出した。
「あぁっ……せんぱっ、」
「お前のこれ、熱すぎ。火傷しそう」
ゆっくりと扱かれる度に力が入らなくなって、本棚に背中を付けながらずりずりと体が下がる。
ついに座り込んでしまったが、聖先輩は手の動きを緩めようとはしなかった。
先走りの液が先輩の手をどんどん汚すが、謝っていられる余裕はない。クチュクチュという厭らしい音が部屋いっぱいに響く。
「あ、ぁ、あっ……ゃば……っ、せんぱぃっ……ぼく……っ」
両手の甲で目を隠しながら、イヤイヤと首を横に振った。
イッちゃう。ぼく、もう少しでイッちゃう。
欲望を解放しようかと思ったその時──
ガッ、とドアが動いた音がして、ぼくはビクッとすくみ上がってそちらを向いた。
ガタガタとドアが揺れて、何回かノックされた後に……
「雫ー、開けてよ? 何鍵かけてんのー?」
乙葉クンの声が、ドアの向こう側から聞こえてきたのでした……。
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