◇第3章◇ ぼくに降り注ぐのはドキドキとモヤモヤと。

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 ズボンの上から触れている聖先輩の手は、指を下に向けた状態でじっとしたまま動かなかった。  それがかなりもどかしい。勝手にぼくのお腹の奥がキュッと閉まったり開いたりしている。  ぼくの手は頭上で固定されたままだ。  できれば早く、その手を動かしてもらいたい。  口から漏れた唾液を拭うことも出来ぬまま、ただ聖先輩の目を見つめることしかできない。 「あっ……ん、ん……」 「どうしてほしい?」 「あっ……聖先輩……ッ」 「ちゃんと言わないんなら、ずっとこのままだけど」 「そ……んな……っ!」  鬼!! そんなの無理!!  ゴシゴシと上下にこすって欲しい。でもそんな破廉恥な事、ぼくの口から言えるわけない!!  聖先輩にじっと見つめられながら逡巡する。  恥を捨てて、口にするか。それともここはどうにか先輩から逃げ出して、トイレに駆け付けてそこで抜いてくるか。  冷静に考えてみれば、正解はもちろん後者だろう。  でも頭が沸騰して全然冷静になれない。  どうすればいいんだ。どうすれば──  答えを見出す前に、ジンジンと熟れるそこの我慢の限界がきたぼくは、自ら腰をゆっくりと上下に揺らし、聖先輩の掌に擦り付けてしまった。   「はぁっ、っ……、……」  聖先輩の手はおっきくて、ぼくのを根元まですっぽりと包み込んでくれている。  親指の付け根あたりのふわふわした部分に当たるように動かすと、じゅわっと腰全体が蕩けそうになる。  恥ずかしい! 変態なことしてる!  そう頭では分かっているのに、ぼくは腰の動きを止められない。 「んん……ッ」 「……っ」  眉を八の字にして先輩を見つめると、聖先輩は気恥しそうに唇を軽く噛んでから、ぼくがまさにやって欲しいと思っていた事をしてくれた。  その掌を上下にさすりながら、ぼくに噛み付くようなキスをする。 「ふぁ……っ!」 「お前っ、エロ過ぎるだろ……ッ」  熱っぽく言いながらぼくの手の拘束を解き、両手でぼくのベルトを外す。  すぐさまパンツの中に手を突っ込んで直に触った。  強すぎる快楽に、ぼくは先走りの蜜を大量に吐き出した。 「あぁっ……せんぱっ、」 「お前のこれ、熱すぎ。火傷しそう」  ゆっくりと扱かれる度に力が入らなくなって、本棚に背中を付けながらずりずりと体が下がる。  ついに座り込んでしまったが、聖先輩は手の動きを緩めようとはしなかった。  先走りの液が先輩の手をどんどん汚すが、謝っていられる余裕はない。クチュクチュという厭らしい音が部屋いっぱいに響く。 「あ、ぁ、あっ……ゃば……っ、せんぱぃっ……ぼく……っ」  両手の甲で目を隠しながら、イヤイヤと首を横に振った。  イッちゃう。ぼく、もう少しでイッちゃう。  欲望を解放しようかと思ったその時──  ガッ、とドアが動いた音がして、ぼくはビクッとすくみ上がってそちらを向いた。  ガタガタとドアが揺れて、何回かノックされた後に…… 「雫ー、開けてよ? 何鍵かけてんのー?」  乙葉クンの声が、ドアの向こう側から聞こえてきたのでした……。
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