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ダラダラと冷や汗が出る。
全てを解放しようと思っていた矢先だったので、吐くタイミングを逃してしまった欲望は体の奥へ逆戻り。そのせいでソレは時折辛そうにひくんひくんと揺れている。
聖先輩がそこをギュッと締め付けてくれているお陰でなんとか我慢は出来ているが、そんな最中、またドアがガタガタと震えた。
「あっ……ど、どうしよう……っ」
血の気が引いていく。
この危機一髪な状況、それにこの体の中をさ迷っている欲望もどうしよう。
とりあえず乙葉に不審に思われないように声をかけようと息を吸い込んだが、言葉を出す前に聖先輩に口を塞がれた。
「んっ、」
「静かにしてろ」
聖先輩は全く動揺もせず、身を縮こませて一緒にドアの方を見る。
心なしか先輩の口角が上がっている気がする。
チクショー! なんか楽しそうにしてるし!
ふと、ドアの動きが止まった。
「スペアキー、あったっけかなぁ」
乙葉の声と共に、そこから立ち去る足音が聞こえた。
スペアキーは図書室のカウンターの下に掛かっている。
鍵を持ってここに戻ってくるまで、早ければ2、3分。その間に逃げなくちゃ。
「先輩、逃げましょう」
「無理だ。どう考えても鉢合わせするし、お前のこれ、爆発しそう」
「はっ……ちょ、っとまっ……ンンッ」
聖先輩は意地悪くぼくのを上下に扱く。
少し落ち着きを取り戻していたのに、そのせいでまた熱を取り戻してしまう。
バカッ。聖先輩のバカッ。こんなことやってる場合じゃないのに。
ぼくはなけなしの力を振り絞ってズボンをあげようと手を掛けた。
中心は濡れまくっているし勃ち上がってもいるが、しょうがない。
「ここで見つかるよりはマシですよ! 早く外に出ないと」
「見つからなきゃいいだろ」
「えっ?」
聖先輩は窓とカーテンを閉じて部屋を暗くし、ぼくを隅にある傷だらけの長テーブルの下に座らせた。
そして、ホコリ避けのためにかけられていたシーチングを本棚の上段から引っ張ってぼくの頭の上から体を包み込むようにフワッと被せた。
ホコリが鼻腔を刺激してくしゃみが出る。
「静かにしてろよ」
聖先輩もその布の中に一緒に入り、お互い向き合うようにして背中を丸めた。
聖先輩の顔が、目の前にある。
ドクドクと耳元に心臓がついているみたいに激しくなるそれを意識しつつ、ぼくは小声で抗議した。
「ダメですよっ。見つかっちゃいますって」
「見つかったら見つかったで、またその時に考えよう」
ばかーーー!
涙目になっていると、ドアの鍵が開く音がしたので、反射的に息を止める。
「雫? あれー、来てないのかな」
乙葉の靴底がコツ、コツ、と近づいて来る。
もし乙葉がカーテンを開けて明るくし、この部屋を隈なく捜索し始めちゃったらもう終わりだ。
聖先輩のせいですよと言わんばかりに涙目で睨むが、先輩はちょっと恥ずかしそうに視線を外してから、ぼくの唇に軽くキスをした。
おねだりしたわけじゃないよーっ! 聖先輩のバカーー!
「もしかして雫、場所間違えたのかなぁ? んな訳ないよなぁ」
乙葉の声がまた聞こえてハッとする。
さっきよりもぼくたちに近づいて来たような気がする。
そんな時だった。
聖先輩の手が、ぼくの足の間に伸びてきたのは。
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