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「こんなオシャレな場所、来れるだなんて思ってませんでした」
「俺だって。でも期間限定って聞いて、ファンとして来ないわけにはいかないからさ。小峰だったら付いてきてくれると思ったし、それに聖だって喜ぶと思ったし」
ぼくはカラメルプリンを口に運びながら、聖先輩をじっと見る。
表情を変えずに黙々とケーキを食している聖先輩を見ていると吹き出しそうになる。やっぱり甘いものが好きみたいだ。
ぼくもイケメン2人に負けないように、どんどんと口に運ぶ。バスケの練習を頑張ったからか、甘みが体の隋まで染み渡る気がした。
もうこれ以上は無理っていう手前までスイーツを堪能したぼくたちは、紅茶を飲みながら談笑した。
先輩たちが初めて話した時の事。初めはそんなに仲良くなかったけど、いつのまにか一緒にいることが多くなった事や、修学旅行の思い出など。
ほとんど歩太先輩が喋って、聖先輩がたまにツッコミを入れるっていうのが多かったけど、醸し出す雰囲気だけで2人が互いにどれだけ気を許していて仲良しなのかってことがよく分かった。
「聖は昔からよくモテていたんだ」
歩太先輩がそう切り出したので、ぼくはどきっとした。
その流れで、恋愛トークが広がっちゃうんじゃないかと。
予想通り、歩太先輩はぼくの恐れていた事を口にした。
「聖は今、付き合ってる人とかいないの?」
ぼくはカップを傾けて顔を隠しながら、斜め前に座る聖先輩の様子を伺う。
聖先輩は、隣に座る歩太先輩とぼくをチラッと交互に見比べた。
やめてやめてーーっ! そんな見てたら気付かれちゃうでしょう!
サッと視線をずらすと、聖先輩は「特に、いない」とポツリと呟いたので一安心。
「ふぅん、そっか。まぁお前、誰かと付き合うのとか向いてないと思うって前に言ってたもんなー」
聖先輩がぼくとの関係を内緒にするって約束を守ってくれていてありがたいが、やっぱりいつまでも隠し通せる訳ではないんだろうなぁ。
姉にも乙葉にも、歩太先輩は諦めて、このまま聖先輩を好きになったらって言われた。それが波風を立てない一番の解決策なのだろう。
ぼくが恐れているのは、この2人の仲を壊してしまうこと。それだけは絶対にしたくない。
けど一体、一体……
どうしたらいいんだよーー!
頭を抱えながら1人で悶絶していると、先輩たちは「いきなりどうした?」と首を傾げた。
「はっ、すみません、何でもないですっ」
「ふふ、小峰はホント面白いな。そんな小峰くんには今、好きな人はいるんですか?」
「へっ?! いやっぼくも、特にいなくてっ」
咄嗟に出た言葉に、歩太先輩は「ふぅん、そうなんだ」と素直に受け取って、それ以上は詮索してこなかった。
「あ、歩太先輩は……?」
何気なく聞いた風に装っていても、心臓はバックンバックン言ってる。
すると隣の聖先輩は、「おかわり取ってくる」とカップを持って席を立ち行ってしまった。
もしかして、なんか気を遣わせちゃったのかな……
いや、でもこれは絶好のチャンスだ!
歩太先輩は少し迷ったように「う~ん……」と考え込む振りをしてパッと顔を上げた。
「いるよ」
「えっ」
「野乃花ちゃん」
「……もう、そうじゃなくて」
焦れったく言うと、歩太先輩は「分かってるよ」と瞼を落とし、紅茶を一口飲んだ。
「リアルでもちゃんといるよ。笑顔が可愛くて、面白い奴なんだ」
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