出会い

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まるでそれを予知していたかのように、「眠たいなら寝ても大丈夫だよ?」と、朝陽は言った。 「え、でもそれだと朝陽くん退屈じゃん。それに運転までしてもらってるのに」 「俺は大丈夫。俺も疲れたら休むし、眠くなったらサービスエリアで寝るからさ。それに、このデートは俺が誘ったんだから、そういうのは気にしなくていいの」 まったくこの人はどこまでも優しい______。朝陽の優しさは、大きな毛布のようであった。澪は彼と会ってから何もしてないのに、どうしてこの人はずっと優しくしてくれるのだろう______。彼女は不思議になり、それを彼に問いかけた。少し俯いて、恥ずかしそうに。すると朝陽は「人が人に優しくするのに特別変わった理由なんてないよ。ほら、どっかの某有名な先生が言ってたでしょ?“人っていう漢字は、人と人とが支え合ってできてる”ってさ」とまた優しい笑顔を見せて答えたのである。 「俺たちはたまたま明日死ぬ者同士で、たまたまさっき出会えたから、死ぬ前に遊ぼうぜってなっただけのこと。それ以外に何か理由いる?」 朝陽はサイドシートに座る澪に問いかけた。 ううん、いらない。と、彼女は答えた。そこで彼女は思ったのだ。なぜこんな良い人が明日死んでしまうのだろう______と。彼はたしか病気だと言っていた。彼の未来を奪おうとしているその病気にどうしてなってしまったのか、こうなる前に気付けなかったのか、澪は気になったのである。「ねぇ……」と、澪は朝陽に声をかけ、そのことについて聞いてみる。 「なんで、朝陽くん明日死ぬの?」 「さっき言ったよ?病気だって」 「病気なら、早期発見ができれば、そうならなかったんじゃないの?」 「まぁ、たしかにそうかな。でも、できなかったから」
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