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「みんな死んじゃえって顔してるね」
まさか、そんな言葉をかけられるなんて思っていなかった。
澪は別にそんな顔をしていたつもりはないし、そんなことを思っていたわけでもない______。
いいや、思っていたといえば、それと近いことは思っていたけれど______。
澪は戸惑いながら目の前にいるその男性を見る。
その人は、自分と年齢がほとんど変わらない男性。恐らく、20代前半くらいだろう。身長は自分より少し高め______170cmほどだろうか。そして何より目に留まったのは、その整った顔立ちを台無しにするかのように青白くなった、顔色であった。
澪は何から話せばいいのかわからず、とりあえず、「は?」とキョトンとした顔で声を上げたのである。
ここは北海道の釧路市______。かつては北海道第二の都市とも呼ばれたこの町は、炭鉱業と漁業、そして製紙業で栄えた町で、そのどれもが衰退してしまった今となっては、過疎化の一途を辿る廃れた町であった。そんな町で、澪は生まれ育った。
特別裕福な家に生まれたわけじゃない。比較的一般的な家庭に生まれ、一人っ子だったこともあり、両親からの愛情は目一杯注がれてきた。やりたいことも自由にやらせてもらえたし、自分がやることは悪いことでなければ両親はいつも応援してくれた。そのためか、学生生活は有意義に過ごせたと自覚している。しかし、そんな彼女を襲ったのは、社会に出てからの壮絶な人間関係であった。
別にこれは、澪に明らかな問題があったわけではない。世間的に言う、“いびり”というやつであった。学校を卒業し、彼女が働き始めた会社は、俗に言う、“ブラック企業”というやつで、中でも人間関係はすこぶる悪かった。
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