出会い

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学歴マウントを取らないとやっていけない上司、その上司に気に入られるために一緒になって陰口を叩く同僚、何かといえば仕事の失敗を押し付けてくる先輩たち______。そのすべてが彼女の華奢な体にのしかかった。もちろん、最初の頃は、これが社会人なんだ、みんなやってきたことなんだから我慢しなきゃ______。なんて自分を無理矢理納得させてきた。一生懸命にやっていれば、きっと誰かが見ててくれて認めてくれる______。そう信じていた。だが、世間はそんなに甘くはなかった。 周りを気にしてしまっているからか、仕事にはまったく集中できないし、そのためにミスは連発してしまうし、それで上司からも、先輩たちからも怒られ、加えて同僚からはいちいち嫌味を言われる______。ミスを連発してしまえば、周りからの目はどんどん冷たくなり、いつの間にかその会社には、澪の居場所はどこにもなくなっていた。昼休憩のために使う休憩室も、彼女が心を落ち着かせられる環境ではなかった。いつからか、仕事に行くことが苦になって、家を出なきゃいけない時間なのになかなか家から出られず、腹痛や吐き気を催すようになってしまい、それで遅刻することも多くなっていた。 ここまでくると、澪もそろそろやばいのかもしれないと思い、両親にこのことを打ち明けたが、冷静に諭され、最後には「もう少し、」と言われる始末______。 “がんばる”って何なのか、今までの自分はのか______。その時の彼女はすでにパニックに陥っていた。 同級生の友人たちにも相談してみた。しかし、返ってくるのは両親とほとんど同じこと。もしくは、「好きなことをして気を紛らわせてみたら?趣味とかさ」と言われるだけであった。
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