11人が本棚に入れています
本棚に追加
「まさか。そんなことしないよ」
「じゃあどうすんの?」
「俺は別に特別なことはしないよ。もし、俺が外に出掛ける機会があって、その時に彼女に出会うことがあったらって話だ」
「そんなことあるか?奇跡に近い確率じゃね?ってか、捕まることも怖くないっていうなら、ストーキングでもやりゃいいじゃん」
「馬鹿野郎。最初からそんなことしたら救うことにならないだろ。まぁ、その奇跡的な確率に期待でもしてみるさ」
朝陽はまたヘラヘラと笑った。あくまで彼は、その名前も知らない、話したことだってほんの数秒しかないその“彼女”を助けたいだけであった。以前に自分を助けてくれた“彼女”をこの命が尽きてしまう前に______。
そう決意した彼なのだが、病気がどんどん進行して、動くのもやっとという感じになっていった。朝陽はそんな自分を悔やんでいた。しかし、どんなことがあっても、彼女のことは助けたいと強く思っていた彼は、部屋から出る回数を増やしていった。その日々は、確実に朝陽の体を蝕み、その命を削っていたのだが、朝陽はそれをまったく苦にしていなかった。
そして、その日はやってくる______。
朝陽はその日の朝、痩せ細った青白い顔でベッドに横になっていた。そんな彼に、たまたま仕事が休みで彼の部屋を訪れていた大軌が話しかける。
「体調はどうだ?」
「すこぶる悪いよ。あー死ぬんだなーって感じだ。体は思うように動かないし」
「痩せたな、お前」
「ダイエットにはいいぜ?癌になるってのは」
朝陽はヘラヘラと笑ってブラックジョークを言う。
「死ぬ気でダイエットってか?冗談にならねぇぞ朝陽」
「こんな体調でも冗談言ってるんだから、笑えっての」
「だったら笑える冗談言えよ」
最初のコメントを投稿しよう!