余命 明日の自分

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「ギャグセンは案外高い方なんだけどな」 朝陽はそう言った後に咳き込む。余命がついに明日となると、咳き込むだけで体力のほとんどを使い果たしてしまう。そんな彼の背中を摩りながら、「病院行かなくていいのか?」と大軌は心配して声をかける。しかし、朝陽の答えは決まって同じであった。 「入院なんかしたら、あの子のことを助けられない。それに今日はまだ調子が良い方なんだ。俺は最後まで諦めないよ……」 そう答える朝陽はつらそうな顔をしながらも笑っていた。彼を止めることなんてきっとできない。それはわかっていたが、もう少し生きてほしいというエゴが大軌の心を埋め尽くしていた。 「病院に行けば、もしかしたらもう少し生きることができるかもしれない……そうしたら、その子に会える確率だって______」と、そこまで大軌が話すと、朝陽はそれを遮って、「上がるわけない。むしろその方が確率は下がる」と言った。 「こんな状態の俺が入院したら、外に出ることはまずできなくなるだろうしな……」 朝陽は大軌の思惑についてすべてお見通しであった。 「大軌の気持ちは嬉しいけど、ここまでなっちまった俺の命が延びるってなったとしても、一日か二日程度だろう……」 朝陽は大きく息を吐く。「大軌は、もう洋子ちゃんのことを気にかけてやれ。もうすぐ死んじまう俺のことなんて気にしなくていいから……」と、彼はこれまで自分を支えてきてくれた大軌に言った。 「そんな突き放すこと言うなよ。俺は好きでお前を支えてんだ。洋子もそのことを理解してる。最後までやらせてくれよ」 「ありがとうな……」 朝陽は乾いた笑いをしてからそう言った。その時の声は、まるで力がなく、今にも消えてしまいそうな声であった。
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