余命 明日の自分

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心はすっかり闇に落ち、自分が生きている価値なんて見出せていない人のずんと重たい空気を纏っている。その背中には、朝陽は見覚えがあった。その背中は、志半ばで介護の仕事を辞めていった真面目で善良な介護職員たちと同じものであった。この時、彼は自分の推理が的中していたのだと確信した。ここまでくれば、今の彼女がいったいどんな顔をしているのかだって言い当てられる______。朝陽は、信号待ちをするその女性にそっと歩み寄り、彼女の横に立つ。しかし、それでも彼女は虚空を見つめているようで、朝陽にはまったく気付かない。そこで、彼はそっと彼女の顔を覗き込み、言ったのである______。 みんな死んじゃえって顔してるね______。 完。
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