出会い

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そして、澪は次に自殺の方法を考え始めた。オーソドックスなのは、たぶん『首を吊る』か『手首を切る』かだろう______。確実に死ねるのは、前者らしい。じゃあ、首を吊ろう______。そう思って必要な道具を探してみたが、ロープも、それの代わりになって首を吊ることができそうなものも部屋にはなかった。 仕方ない、じゃあカッターで手首を______。と思い、カッターを探すが、それもない。ここでナイフや包丁でもいいじゃないかと思うだろうが、この時の彼女はそこまで思考が至らなかった。死ぬこともできないことに一度絶望し、澪はまたひとしきり泣いた。リビングの真ん中でへたり込み、部屋の電気以外何もついていない、無音の部屋で、ただひたすら泣いたのであった。 ロープかカッターを買いに行こう。と、思い立つまで、澪は一時間ほど泣いていた。そのせいで目は腫れてしまって、決して見せられる顔ではなかった。 車も持っていなかったから、澪は歩いて近くのホームセンターまで向かった。その道中でも、涙は勝手に溢れてくる。それは彼女の心の限界を表していた。しかし、そのことに周りは気付かない。すぐ横を歩き去っていく通行人は、どーせ彼氏にでもフラれて絶望しているのだろう______。なんて、勝手な推理をして話しかけることもない。所詮、両親や友人たちも自分のこの苦しみに気付いてくれていなかったんだから、赤の他人が気付くはずがない。世の中なんてこんなもんだと、もはや悟りの境地にまで達していた澪に、ふと、かけられたのが______。 「みんな死んじゃえって顔してるね」 この言葉であった。信号待ちで、このまま赤信号に飛び込んでも死ねるのか______。なんて考えていた澪のすぐ隣から、その声はかけられたのである。
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