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2話
初めてここにたどり着いたのは、もう幾年前のことだろうか。
降りしきる雨粒からこの身を庇おうと、屋根が葺かれたばかりの社に入り込んだ。
まだ神が住み着く前の建物は、新しい木材の匂いが立ち込めていて、居心地が良かった。
雨宿りのつもりが一日、また一日と日を重ねてしまい、気がつけば年を重ねてしまっている。
神の住まいになるべき場所であったせいか、そこに存在する力が、徐々に私の体に入り込んだ。
私のことを駆除するはずの人間すら、自らの力では近づくことができなくなったのはいつからだろうか。
「あぁ。退屈だ」
私の声を聞き付けたように、しゅるしゅると糸が伸びてゆく。
しまった。私の退屈しのぎに、また誰かがつれてこられてしまう。
私は、もう感情を動かしてはいけないというのに。
私の欲求を叶えようと、糸は何かを捕えて戻る。その何かを見た途端に、私の意識を占領する本能。
糸があるかぎり、私は自身の気すら自由にならない。
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