……どうか、あと少しだけ――

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 ところで、実のところ現状(いま)こんな仕事(こと)をする必要はさしてない。エリスのお陰で今や生活費はほぼかからないし、更には彼からの――何もしてないのに、他のお客さん以上にくれる報酬のお陰で、もしかすると今や人並み以上に貯蓄もできているくらいで。  ――だけど、私は辞めなかった。エリスには極力バレないよう、彼が外に出ていてほしいと私に頼む数時間を使って。この時間なら、間違っても彼が波止場(こちら)へ足を運ぶこともないだろうし。……まあ、それはともあれ―― 「……うん、そろそろかな」  そう、高鳴りを抑えつつ口にする。……うん、そろそろ良いよね。これだけあれば、彼を―― 「――――っ!?」  そんな高揚と共に、あの部屋へと掛けていく最中(さなか)だった――卒然、希望から絶望へと落とされたのは。
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