……どうか、あと少しだけ――

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「……ちょっと、待っ……」  すっかり冷えた路上にて、力なくそう口にするも返答はない。まあ、それもそのはず……声を掛けるべき対象――私からあらかた紙幣を奪っていった掏摸(すり)犯は、もうとうに私の視界にいないのだから。……いや、仮にいたところで返答などあるはずもないだろうけど。  そして、私というと……まあ、みっともなく路上に倒れているわけで。……うん、冷たいなぁ。  でも……うん、もう動けないや。目の前で、呆気なく希望が潰えた――そういう、精神的な理由もあるかもしれないけど……そもそも、もう限界みたい……身体(こっち)が。
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