……どうか、最期に……

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 それから少しして、エリスの淹れてくれたコーヒーを嗜む私。……うん、暖かい。 「……あと、これ……その辺に落ちてたんだが、あんたのだろ?」 「……へっ?」  すると、不意にそう言って差し出すエリス。その手には、唖然とするほどの大量の紙幣が。確かに、あの時の私はこれ以上の紙幣を所持していた。なので、あの掏摸犯がその大半を落としたと仮定すれば、一応話は成立する。  ……だけど、流石にそれは無理がある。いったい何があったら、そんな都合の良い展開になるのかという話だし……何より、だとしたら紙幣(これ)はあまりに綺麗すぎる。流石に、あの短時間で犯人を捕まえ取り返したなんて話だと現実味がなさ過ぎるから避けたのだろうけど……これだって、ごまかすには到底無理がある。……実は、意外と天然?  ……まあ、でもそれならそれで良い。遠慮なく、私のものとさせてもらおう。そして―― 「……ありがと、エリス。それで、ものは相談なんだけど――このお金で、貴方を買いたいの」
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