結婚式場に響く鎮魂歌

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「私さ……。木本(きもと)先輩と……、付き合うことにしたんだ」  麗華と共に下校をしていた春先。  何度も沈黙を繰り返していた後に、その言葉を口にした。 「……え?」  木本先輩が一瞬誰か浮かばなかったけど、お兄ちゃんのことだと分かると、私の心は何かに切り裂かれたように激しく痛んだ。  嘘。嘘だよね? お願い、そう言って。  しかし、そんな願いなど叶うはずもなく。 「実は何度も告られててさ! 私、気が弱い人はタイプじゃないんだけど、あそこまでアプローチされたらまあ良いかなって!」  早口で話す麗華の顔を、直視することが出来なかった。  あのお兄ちゃんが? 控えめで、消極的で、繊細な性格なのに何度も?  その事実に、私はその事実を認めるしかなかった。  ……これは本気だ。何度も告白するなんて、それほどの想いだったんだ。  諦めると決めていたが、二人の付き合いに激しく動揺している私は、お兄ちゃんのことが好きなのだと再認識してしまった。  幸い、麗華はお兄ちゃんとの付き合いを一切話さなかったので、今までと同じ日々を過ごすことが出来た。  しかし高校三年の春、私はその現実を突きつけられた。  それは家の近所を一人歩いている、麗華を見かけたことだった。  水色のワンピースにヒールの靴、綺麗にまとめた髪。  いつもラフな格好しているのに、あれだけオシャレして、はにかんでいる姿を初めて見た。  そっか。麗華も、ああゆう顔するんだ。  その姿に、どこに向かっているかは明白だった。
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