結婚式場に響く鎮魂歌

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「──ここからのお時間はゲストの方より、お二人へのお祝いをいただいてまいりましょう。まず初めに、新郎新婦の高校時代のご友人であり新郎と同じ合唱部だった皆様。そして新郎の幼馴染であり、新婦の小学校以来のご友人である山口絵美様よりお祝いの言葉を頂戴しましょう。ではよろしくお願いします」  男性司会者の声に、来賓席より湧き上がる拍手。  余興をする私達に当たるスポットライト。  その前に一歩出てマイクを握る私。  その姿を見てニコッ笑う新郎に、目を逸らしてくる新婦。  そんな顔しないで。  そう思いながら一礼する。  白いドレスに身を包んだ新婦はより一層美しく、タキシードを着こなしでいる新郎はもう大人であの頃の面影など残っていない。  だけどやっぱり中身は変わっていなくて、新婦を見ては頬がふにゃと緩み、締まりがない。  そんな新郎を呆然と見つめている自分に気付き、慌てて来賓者に一礼して挨拶を始める。 「ご紹介に預かりました。私は新婦 麗華さんとは小学生からの親友で、新郎 裕一郎さんとは家が隣同士の幼馴染で頼れる……、ちょっと頼りないお兄ちゃんでした」  どっと笑いに溢れる式場内。苦笑いを浮かべるあなた。  高校時代の友人の中で、私が新郎新婦と一番関係が深いからと代表挨拶としてのスピーチ。そして合唱のソロパートを歌うことになっていた。  この結婚を祝福出来なかった私が、祝いの歌を。
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