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それからお兄ちゃんは、急ぎでない話をしにわざわざ一年の教室に来ていた。
「合唱部の連絡事項を、私にまで話さないでくださいよ……」
麗華を巻き込んで。
「……先輩のこと、どう思ってるの?」
二人でお弁当を食べている時、そう聞かれた。
「え? お兄ちゃんだよ」
当時はそれが本心で、兄に恋愛感情など抱く訳ない。本気でそう思っていた。
「あー。そっか……。残念ー」
苦笑いを浮かべる麗華に、私はふっと思う。
あれ? もしかして……。
そう思い始めていた頃にも、変わらず教室にやってくるお兄ちゃんは、また何でもない話を私達にして帰って行く。
あの目は。ほんわりした笑顔は。まさか。
……私のことが好きなの?
いや私、妹みたいなものだよ?
確かにただの隣人で、血は繋がってないけど。
そう思う一方で、ドキドキとなる胸の奥。
冷静に考えれば隣に居る友人目当てだったと分かるのに、そんなことにも気付かない高校一年生の私。
その勘違いからどんどんお兄ちゃんを好きになってしまい、気付けば止まらないところまできていた。
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