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次の日、慎太郎は本当に中庭で私のことを待っていた。
私が昨日観ていたパニック映画をさっそく視聴したらしく、熱い感想を伝えてくる。
「脚本もCGの技術もレベチだったなー! B級パニック映画も嫌いじゃないけど」
「慎太郎、パニック映画好きなの?」
お弁当がらのごみを片付けながら私は訊く。
「好き好き! ぎゃあぎゃあ言いながら観るのが好きなんだ。もしかして夢も?」
下の名前で呼ばれ、こそばゆく感じながら「うん」と頷いた。
実は私も、パニック映画が好きだ。時間さえあれば恐竜や鮫やゾンビが出てくる作品を視聴している。両親は「悪趣味だ」と言ってくるけれど、やめられなかった。
少しだけ――本当に少しだけ――ドキドキすることができるからだ。ラブストーリーやヒューマンドラマでは途中で寝てしまう。
「じゃあ今度の土曜日ヒマ? 駅前の映画館行こうぜ」
「映画館?」
「韓国のゾンビ映画が公開されるんだ。でも一緒に行ってくれるやつがいなくてさ。……スマフォ出して!」
「え? うん」
言われるがままにスマフォを出す。顔認証ですぐにロックが外れた。
彼は私のスマフォ画面を勝手に操作し、SNSアプリを立ち上げアカウントを登録してしまう。
「時間とか決まったら連絡するから!」
チャイムが鳴り、彼は焼きそばパンの入っていた袋を潰して校舎に戻ってしまう。
私はただただ後ろ姿を見送った。
慎太郎は強引だ。
でも、不思議と「嫌だ」とは感じなかった。
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