透明なこの世界を、きみが色づけるから

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 私の家は門限が設定されている。  だから、名残惜しいけれどそろそろファミレスを出ることになった。  テーブルとテーブルの間を歩いていると、後ろからドンと衝撃を受け、よろけてしまった。同時に足元でガチャンと何か落ちる音。 「お客様! 申し訳ありません!」  提げた食器を運んでいた店員さんとぶつかってしまったらしい。足元にはお皿やグラスが散乱していた。「お怪我はしていませんか?」と心配されたけれど、プラスチック製の食器は割れておらず、怪我ももちろんしていなかった。 「大丈夫!?」  先に会計をしていた慎太郎が音に気がついて戻ってきてくれた。  私の手を取り、傷が無いか確かめている。私が「大丈夫」と返事するより先に彼がまた口を開いた。 「本当に怪我はない? リナ」  ………………え? 「リナ……?」  自分の耳を疑い訊き返す。  はっと息を呑んだ慎太郎と目が合った。
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