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雪side
夏とスーパーに買い物へと出掛けると、向こうから、2人組の男が歩いて来た
…雅…斗?
「雪、知り合い……」
雅斗だ!
「……雅斗!」
雅斗だ
雅斗だ
「ゆ…雪…?」
雅斗が驚いてる
走ってって、そのまま雅斗に飛び付く
「雪!元気だったのか?」
「ふぅ~~っ…雅斗っ…ごめんなさいっ!」
雅斗に一言も言わないで…
「ははっ…泣き虫なのは変わってないな」
懐かしい
雅斗の優しい声
雅斗
雅斗
「雪…一緒に居たのが…夏?」
「うん…」
「向こう歩いて行っちゃったぞ?」
「えっ?!」
振り返ると…
もう…居ない
「ははっ…大丈夫。悠が追いかけてくれた」
「えっ?!大丈夫じゃないよ!」
「大丈夫。悠が優しくて、絶対浮気しないって、知ってるだろ?」
「……うん……じゃあ、雅斗と、もうちょっと話してていい?」
「いいよ。店の前じゃなく、向こう行こ」
「うん」
「ふっ…離れないのか?」
「うん」
雅斗の匂い
雅斗の笑い声
安心する
店から少し離れた場所のガードレールに腰掛ける
びしょびしょになったマスクを外すと
「雪…顔…喧嘩でもしたのか?やんちゃだなぁ…って…この傷……雪…こんな傷付けるなんて、普通じゃないだろ?どうしたんだ?」
そう言って、左頬を優しく触る
忘れてた…
心配そう…
「…勝手に被害妄想!俺に彼女取られたって逆上して、突然殴られた。カッターまでご持参で、どんだけだよ」
「…ちゃんと…警察に言ったのか?病院行ったか?」
「言わないよ、めんどくさい。誤解が解けたんだから、もう来ないだろ?怪我は、夏がちゃんと消毒してくれた」
雅斗に…
あんな事、言えない
「あんまり無茶すると、夏が心配するぞ?」
「夏は…あれからずっと心配してる。さっさと俺から離れればいいのに……それより、雅斗…挨拶もしないで居なくなって、ごめんなさい」
「雪が元気ならいいんだ。夏と居て安心した。一緒に居たいと思う奴なんだろ?」
「……一緒に居たいとか…大切だとか……そういうの作ったら…離れる時…困る」
「雪……まだ…死にたいのか?」
まだ…
ずっと…
「うん…でも、雅斗と悠に止められて、悠に怒られて、俺みたいに何の役にも立たないで消えてく奴が、人に迷惑かけちゃダメだよなぁと思って…今は、ちゃんとやる事やってから、出来るだけ人の迷惑にならない様にって…思ってる」
「夏はそれ…知ってるの?」
「知ってるよ。だから、まだ先の事だって言ってんのに、ちょっとした事で、すぐ心配する」
「雪…それは…夏も苦しいだろ?」
知ってる
だから、あまり深く関わりたくないのに
「だから…ただ、大人達が心配して、一緒に暮らす事になった…ただの友達で居たかったのに…」
「…夏の事…そういう意味で好きなんだろ?」
「…困る…俺…夏と同じだけは生きられない。その時…凄く困るの分かってる」
「夏も…雪の事好きなんだろ?雪が俺に飛び付いた時…そうなんだろうなって顔…してたよ」
それは…
びっくりした顔じゃないの?
「夏は…特殊な任務を与えられて、特別変わった俺と居るから…自分の気持ち分かんなくなってるんだと思う。俺が好きって言ったから、俺を悲しませない様に…喜んでもらえる様にって考えて…それが自分の気持ちなんだって、勘違いしてるんだ…」
「…そんな事言われたら…俺もちょっと…自信なくしちゃうな」
雅斗が、俯いて言った
「どういう事?」
「…俺…ちょっと家庭環境が複雑で…だいぶ…メンタルやられてた時、悠と出会ったんだ。悠は、あの通りだから、俺を家に連れてくまでも、ずっとなんか怒ってたし、家に着いてからも、ずっと怒ってた」
「げぇ~。うざい」
「でも…薄暗くなった公園で…雨が降ってきて…それでもベンチに座ったままだった俺に、声を掛けてくれたのは、悠だけだったんだ」
「……そう…だったんだ」
全然知らなかった
「だから、雪の気持ち、少し分かる。だけど…さっきの夏の顔は、そういう意味で好きな人への嫉妬だよ。大丈夫」
「そんな事言ったら、悠なんか、嫉妬丸出しなんだから、絶対大丈夫だろ」
「うん…でも、それすらも、俺の為に…とか。考え出したらキリがないんだ」
「うん…」
分かる気がする
「俺、メンタル弱いからさ。そして、すぐに悠にバレちゃうから……そうすると、悠が言ってくれるんだ。別にどんな意味だっていいだろ?他の誰よりも大切で、傍に居たいって…お互いそう思ってるんだからさ。難しく考え過ぎなんだよ!って」
「ふっ…悠、言いそう」
「結局、どこまでいったって、何してもらったって、俺の根底にあるものは変わらないんだと思う。だから…なるべく自分の事考えるのやめたんだ。自分の事考える時間、悠の事考える様にしたら…ふっ…すっごく幸せになった」
「……うん」
すっごく幸せ…でしかない笑顔
いいなぁ
「…毎日…死にたいなぁとか、死ななきゃなぁとか、思うんだけど、夏と居ると、そういうの考えてる時間…減ってると思う」
「…そっか」
「死ぬ時が来たら…俺、ちゃんと死ねなくなっちゃうんじゃないかな…とか…夏に…辛い思いさせちゃうのかな…とか…思うと……一刻も早く離れた方がいいと思うんだけど……」
「離れられないんだろ?」
こうなる前に、さっさと離れたかった
気付くのが遅過ぎたんだ
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