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夏希side
『イチゴ、残り食べちゃっていいよ』
『ちゃんと、ご飯も食べろよ』
っと
「いただきます」
「う~わ…何それ?!」
「空閑…何って、俺の昼飯だ」
「いや、その食いもんは、何なのかって聞いてんだよ」
「イチゴご飯だ」
「この世に、そんな不気味な食い物あったのか……」
雪が、同じマンションの人から貰ったという、大量のイチゴを存分に楽しむ為
朝からイチゴご飯を炊いて持って来た
「旨いよ。少しなら食ってもいいぞ」
「いや……絶対要らない」
「っそ」
ヴヴ ヴヴ
『今日はバイトないの?』
『今日はなし』
ヴヴ ヴヴ
『じゃ、何食べたい?』
「ふっ…」
『帰りに食材買って、帰ったら俺が作るから、大人しく休んでろ』
すぐ動こうとする
じっとしてられない奴
ヴヴ ヴヴ
『過保護』
『過保護で結構』
「仲直りしたんだ」
え?
「昨日、こじれてると思ったら、上手くやってんじゃん?」
「まあ……全部が解決した訳じゃないけど……」
「ふ~ん?ニヤニヤしちゃって」
「は?!してねぇよ!っつか、何でこれ、雪だって分かった?」
「夏希が…やらっしぃ顔してるから」
「してねぇよ!」
ったく
でも……
全然…全く理解出来ないが
雪と話すキッカケになったのは、こいつにされた事、怖かったって言ったからで……
ほんのちょっとだけ役立ってたりもする
「その……昨日は…ありがと」
「え?」
「お前はそんなつもりなかったろうけど、お前にされた事で…雪の気持ちが少しは分かったって言うか……そういうの……話のとっかかりになって…雪と話せたりしたし……最後の方は、結構真面目に聞いてくれてたからな。一応、お礼」
「………」
ん?
空閑の顔を見ると、何とも言えない顔をしている
「何でそんな…困った様な……悲しそうな顔してんだ?」
「悲しそうじゃなくて、可哀想な顔だよ」
「何でお礼言ったら、可哀想だと思われるんだよ」
「いや……突然襲ってきた男に、お礼言うなんて……いつか夏希……犯されちゃうんだろなぁと思ってさ……」
「は?!お前みたいな奴、その辺にゴロゴロ居る訳ないだろが!基準をお前にするな!」
この変態が!
「それは、そっくりそのまま夏希に返すよ。夏希みたいな、綺麗な考え方する奴等ばかりじゃないんだよ。基準を夏希にしない方がいいよ?」
「夏と俺は違う。夏は…優しくて綺麗だから…俺は……そんなんじゃない」
「……別に…俺だって綺麗なんかじゃないし…」
「ん?何か言った?」
「何でもない。ほら、普通のイチゴも持って来たから、やる」
「いっ?!イチゴご飯食って、デザートもイチゴ?!どんだけだよ!」
「雪が、同じマンションの人に貰ったんだって。冷蔵庫にゴッソリ入ってた」
「へぇ~?大学生なのに、ちゃんとご近所付き合いして、偉いな」
ご近所付き合いなんて、した事ねぇし
「たまたまエレベーター乗るの持ってて、一緒になった人だって。なんか、男の1人暮らしなのに、実家から送られてきて、すげぇ困ってたらしい」
「ふ~ん?……知ってる人なの?」
「いや。それが、偶然にも、同じ階の人だったんだって。ほんと、同じ階でも、なかなか会わないもんだよな。今日も明日も、同じ時間には家に居るから、取りに来ていいってさ」
ん?
空閑が、俺のデザートのイチゴを、じっと見ている
「まだ、食いたいのか?1個ならいいぞ」
「……ま、形不揃いだし、本当か」
本当か?
「……どういう意味?」
「いや……お前ら大丈夫か?」
「大丈夫って、何が?」
「会った事もない、男の1人暮らしの家に行くなんて、危ないだろが」
「いや……だって、同じマンションだぞ?しかも、同じ階。何かあって訴えられでもしたら、あっという間に広まって、引っ越しだぞ?」
「訴えられたらな」
空閑が、じっとこっちを見てくる
あっ……
「雪の事、なんで警察に言わなかったんだっけ?」
「……そう…だよな……雪に…1人で行くなって……言っておく」
「この人は大丈夫だろ。理由は嘘じゃなさそうだし。イチゴって、そんな安いもんじゃないのに、そんだけくれるなら、ほんとに困ってんだろ」
「……そう…かな……でも一応」
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