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『イチゴ、お礼言いたいし、今日は一緒に行こう』
「はぁ……心臓に悪い」
「それは、こっちの台詞だ……なあ、今日お前の家行っていい?」
「はあ?ダメに決まってんだろ?」
「何で決まってんだよ?」
「雪が怪我して休んでんだ。お前みたいのは絶対会わせたくない」
「挨拶したら帰るからさ」
雪も別の意味で会いたがってたし
絶対会っていい事ある訳ない
「絶対ダメだ」
「ダメだっつってんだろが!付いて来んな!」
「お前達の事が心配で、眠れない夜になるだろ?」
「知らんわ!」
同じ電車にまで乗ってきて
どういうつもりだ
「なあ、痴漢にあったのって雪って奴なんだろ?夏希、犯人捕まえたりしたの?」
「……捕まえるどころか……全然気付いてなかった」
「ああ…離れてたのか?」
「すぐ…近くに居たのに……」
「……怯えて声出せなかったとかじゃ、なさそうだよな?雪って変わってんのな」
そう思うよな
俺だって、ようやく少し分かってきたところなんだから
「なあ……付いて来んなって言っておいて……この荷物は何?」
「雪は今、怪我してるからな。せっかくお前が居るなら、重い物買ってく」
「え~?お前ん家、ここからどの位?」
「5分位だ」
「えっ?そうなの?近っ!」
「いいか?荷物置いたら、さっさと帰れよ?」
「酷い!こんな重たい物運ばせといて、1歩も中に入れてくれないなんて!鬼!」
「何とでも言え」
米と、トイレットペーパー、一緒に買えた
ラッキー
食材と一緒だと、なかなか大変なんだよな
「ここだ」
「え……ええっ?!ここ?!」
「お願いだから、声のボリューム下げてくれ」
「だ、だって……学生が住むマンションじゃないだろ。もしかして夏希って……御坊っちゃま?」
「違うわ、アホ。色々…事情があんだよ」
ガチャ
「雪、寝てるかもしれないから、静かに荷物置けよ?」
「え~?…ほんとに中に入れてくんないの?」
「当たり前だ。最初から言ってただろ」
空閑が、玄関の上がり口に荷物を置く
「ちょっと位いいだろ?」
「ダメだ」
静かにしろっつってんのに
「夏希…」
「なっ!はっ?!ちょっ……」
何で今、抱き付いてくんだよ?!
こいつの思考回路が全く理解出来ない
「離せってばっ…!」
なっ?!
こいつ!
服の中に手……
「ちょっ…と!ふざけんな!……離れろ!」
「ちょっと黙っててよ。雪、起きちゃうよ?」
~~~~っ!
こいつ!
絶対、耳が弱点だって知られた!
「……夏から離れろ。お前…夏の…何?」
え?
「ゆ……雪?」
いつから……
振り返ろうとすると、空閑が、変に耳を触ってくる
くっそ…!
「友達以上恋人未満ってやつ?」
友達だろが
何その懐かしいフレーズ
ってか!
空閑が、背中の真ん中を、指です~っと上から下に下ろす
「んっ…!ちょっ…!空閑っ…」
変な触り方すんな!
「恋人じゃないなら、触んな!」
ぐいっと後ろから引っ張られる
「…っはぁ……ゆ…雪?」
なんか……
すげぇ怒ってる……
「雪……こいつ…誰にでもこういう…ふざけた事する奴なんだ」
「……ふざけて…夏に触れるな。お前だろ?夏の事襲ったの」
「ああ…知ってたんだ?夏が知りたいって事教えてやっただけなんだけどね。いくら声上げても大丈夫な場所知っててさ。可愛いかったな~夏希」
どうしてこいつは、そういう言い方……
「はぁ……おい…」
「帰れ」
「は?お前だけの家じゃないだろ?ってか、
恋人じゃないなら、雪も触れないね?でも、そんなの、君が勝手に決めたルールでしょ?俺の中では、そんなルールないから。じゃね、雪。夏希、また明日な」
最後の最後までこいつ……
「……おお」
さっさと帰れ
バタン
俺達の事、心配で見に来たかったんじゃないのかよ?
なんか……
よく分かんないけど……
やっぱ、会わせるべきじゃなかった……
それだけは分かるぞ
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