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「あっ!ヤバっ!俺、そろそろ出なきゃ!っと……イチゴ、イチゴ~」
冷蔵庫に向かうと
「…夏!」
雪が、立ち上がって、不安そうな顔をしている
「…どうした?」
「あいつと……空閑と……昨日みたいな事……しないで…欲しい……って言ったら…うざい?」
な…なんか……
うざいってか……
可愛いんですけど……
雪の傍に戻って、抱き締める
「うざくない。心配?」
「だって……ふざけて、いつもしてるんだろ?」
「ふざけた事言ってんのはいつも。ふざけた事したのは、この前と、昨日だけ」
「この前は……あ、いや……」
この前の事…言った方が安心すんのか?
それとも、更に不安になんのか?
「雪…俺、雪が大学とバイト行けない間、大学くらい行かなくたって大丈夫だよ?休もうか?」
「やだ……俺の為に、何かを変えないで」
「俺が、雪と居たいから、休みたい」
「ダメ。そんな適当にしてたら、おばさん悲しむよ。そんな事するなら、夏の事、嫌いになれる」
「待った!待った!冗談。でも、雪が心配だから、休みたいのも、1日位休んでも大丈夫なのも本当……あと…」
「何?」
「俺……今日もバイトないから……雪も俺も1日中家に居るなんて、滅多にないし……一緒に居たい……とか…思うんだけど」
「そ…それは……俺も……嬉しい…かも……」
か…可愛い!
なんで、こいつ、こんな可愛くなったんだ?
「ちょっと、空閑に代弁頼んどくわ」
「うん……」
部屋に行き、空閑に電話する
プルルルル プルルルル
「はいは~い!天使のキューピッド空閑君だよ~?なになに?カップル誕生の報告?おめでとう!良かったね~?んで?代弁頼むって?お安いご用!任せとけ!」
何でこいつ……
「お前……俺に盗聴器でも付けてんの?」
「え?盗聴器が何だって?」
「いや……雪も無事見付かったから、報告とお礼をと思って……ありがとう。あとは、その……大体はお前の言った通りだから……代弁頼みたいんだけど……」
「うん。だから任せとけって!」
「いや…何で全部分かんの?怖いんだけど?!」
この前来た時、玄関に?!
「ははっ!夏季の事は、何でもお見通しさ!雪、怪我治ってないんだから、ほどほどにしろよ!」
「は?答えになってねぇし、何の話だよ!」
「あと……男に上から乗られるのとか…もしかしたら怖がるかもしんないから、気を付けてやれ」
「あ……そうか……そうだな」
「なんだよ?ヤル気じゃん!」
「は?!違うし!」
「じゃな!頑張れよ!」
プツッ
いつも一方的に切りやがって!
けど……そうだよな
あの時の事……思い出させる様な事は
当分やめた方がいいよな……
ってか、雪ととか…想像出来ない……
いや、それ以前に男同士のとか…やり方知らんわ
リビングに戻ると、雪が台所に立っている
「あ、夏、大丈夫だった?」
「うん……何作ってんの?」
「イチゴのパスタ」
「えっ?!イチゴの♪︎」
「ふっ…あんだけ食べて、よく飽きないね」
「全然飽きない。毎日食べれる」
ってか、雪の料理してるとこ見るの、久しぶり
「夏、前にバルサミコ酢買ってたと思うんだけど、知らない?」
「ああ……確か、この辺に……ほら」
「サンキュ……って、ここのじゃなくて、冷蔵庫のイチゴ食えよ」
「だって、目の前にイチゴがあるから、つい!」
「ついじゃない!ったく!」
冷蔵庫から、イチゴの入れ物を出す
イチゴを食べながら、ふと、雪の後ろ姿を見る
うわ……なんか……
なんだろう……
すっごい幸せ感じるのは……
久しぶりに雪が料理してくれてるから?
それとも、好きになった人だから?
こんな感覚…初めてだ……
「夏、鍋にお湯……え?なっ…何?!なんで、イチゴ持ったまま泣いてるの?!」
「……へ?!俺…泣いてんの?!」
「は?!気付いてなかったの?!」
「気付いてねぇよ!な……何だ?これ……」
「ちょっと…イチゴ、こっち置いて。何?なんか我慢してんの?イチゴをパスタに入れるの嫌だった?」
信じられない…
こんな風に泣く事ってあるんだ
「違う……そんなんじゃなくて……」
ぎゅ~っと雪を抱き締める
「何?あっ!空閑に何か言われたの?!」
「違う……俺も、こんなの初めてで、よく分かんないけど……お前が料理してる後ろ姿見てたら……なんか……すげぇ幸せ感じて……気付いたら、泣いてたんだな」
「なっ?!何……それ……夏…頭イカれてんじゃないの?」
「そうかも……でも…幸せなイカれ方で良かった」
ぎゅ~っと雪が、俺の服を握ってくる
「嬉しいと…不安?許せない?」
「…分かんない……自分の気持ちが…よく分かんない」
「じゃ、素直に喜んどいて。そしたら、俺も嬉しいから」
「こんなの……続けてたら……まずいのだけは、よく分かる……その時が来たら……」
「大丈夫。俺が、その時を先送りにしてってやるって言ったろ?」
まあ、そんなの信じられないだろうけど
そんなの、今考えたって、どうしようもない
「な、パスタ作ろ。お湯沸かせばいいのか?」
「うん」
きっと……
どれだけ経ったって
何をしたって……
雪の不安がなくなる日は
来ないんじゃないかって思う
けど、どれだけ不安に思っても生きてる間は、楽しい方がいいだろ?
せっかく生きてる間は、少しでも幸せな方がいいだろ?
ちょっと位は…そう思ってもらえる様に…
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