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「あっ!ヤバっ!俺、そろそろ出なきゃ!っと……イチゴ、イチゴ~」
大学……あいつの居る…
「…夏!」
思わず、立ち上がって、呼び止めてしまった
「…どうした?」
「あいつと……空閑と……昨日みたいな事……しないで…欲しい……って言ったら…うざい?」
何言ってんの?俺
離れろって言っておいて…
夏が戻ってきて抱き締めてくれる
「うざくない。心配?」
「だって……ふざけて、いつもしてるんだろ?」
「ふざけた事言ってんのはいつも。ふざけた事したのは、この前と、昨日だけ」
「この前は……あ、いや……」
この前は…何されたの?
「夏が知りたいって事教えてやっただけなんだけどね。いくら声上げても大丈夫な場所知っててさ。可愛いかったな~夏希」
また……
思い出すだけで
体中を何か不快なものが駆け巡る
「雪…俺、雪が大学とバイト行けない間、大学くらい行けなくたって大丈夫だよ?休もうか?」
夏は…優しいから
「やだ……俺の為に、何かを変えないで」
「俺が、雪と居たいから、休みたい」
すぐに…俺のして欲しい事気付いてしまう
「ダメ。そんな適当にしてたら、おばさん悲しむよ。そんな事するなら、夏の事、嫌いになれる」
「待った!待った!冗談。でも、雪が心配だから、休みたいのも、1日位休んでも大丈夫なのも本当……あと…」
「何?」
「俺……今日もバイトないから……雪も俺も1日中家に居るなんて、滅多にないし……一緒に居たい……とか…思うんだけど」
1日中夏と…
「そ…それは……俺も……嬉しい…かも……」
ほんとは…ダメだろうけど
おばさん…ごめんなさい
1日だけなら…
夏…休ませてもいいかな……
「ちょっと、空閑に代弁頼んどくわ」
「うん……」
空閑……
そんなの気にしたって、しょうがないのに
夏が、部屋に行ってしまった
そう言えば、俺達朝ごはんも食べてない
俺は要らないけど、夏は休みでも食べるのに
冷蔵庫を開けると……イチゴ
イチゴの料理なんて知らないしなぁ
「見て見て、雪!美味しそう!」
あっ……
何だっけ……
パスタ……トマト……生ハムは、ある訳ないか
オリーブオイルに…バルサミコ酢
あれ?前に買ってたと思うけど……
夏じゃないと分かんないや
俺、普段料理しないし
夏が戻って来た
「あ、夏、大丈夫だった?」
「うん……何作ってんの?」
「イチゴのパスタ」
「えっ?!イチゴの♪︎」
顔…
「ふっ…あんだけ食べて、よく飽きないね」
「全然飽きない。毎日食べれる」
「夏、前にバルサミコ酢買ってたと思うんだけど、知らない?」
「ああ……確か、この辺に……ほら」
「サンキュ……って、ここのじゃなくて、冷蔵庫のイチゴ食えよ」
俺が準備してるイチゴを、つまみ食いして!
「だって、目の前にイチゴがあるから、つい!」
「ついじゃない!ったく!」
諦めて、冷蔵庫から、イチゴを出している
これからイチゴパスタ作るつってんのに、よくイチゴ食う気になるな
あ…冷製パスタだから、先に茹でとかなきゃ
「夏、鍋にお湯……」
振り向くと、イチゴの入れ物を持った夏が、泣いて…
「え?なっ…何?!なんで、イチゴ持ったまま泣いてるの?!」
つまみ食い怒ったからな訳ないし
「……へ?!俺…泣いてんの?!」
「は?!気付いてなかったの?!」
「気付いてねぇよ!な……何だ?これ……」
「ちょっと…イチゴ、こっち置いて。何?なんか我慢してんの?イチゴをパスタに入れるの嫌だった?」
それとも、大学休みたくなかったとか?
「違う……そんなんじゃなくて……」
ぎゅ~っと夏が抱き締めてくる
「何?あっ!空閑に何か言われたの?!」
さっきの電話で!
「違う……俺も、こんなの初めてで、よく分かんないけど……お前が料理してる後ろ姿見てたら……なんか……すげぇ幸せ感じて……気付いたら、泣いてたんだな」
…は?
「なっ?!何…それ……夏…頭イカれてんじゃないの?」
「そうかも……でも…幸せなイカれ方で良かった」
そんな風に……
ほんとに幸せみたいに言われると…
「嬉しいと…不安?許せない?」
「…分かんない……自分の気持ちが…よく分かんない」
「じゃ、素直に喜んどいて。そしたら、俺も嬉しいから」
「こんなの……続けてたら……まずいのだけは、よく分かる……その時が来たら……」
俺は……どうなる?
「大丈夫。俺が、その時を先送りにしてってやるって言ったろ?」
こんなのに…慣れちゃったら……
「な、パスタ作ろ。お湯沸かせばいいのか?」
「うん」
夏は知らないんだ……
大切になればなる程……
苦しいのに
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