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夏は、あの時、この目に見える怪我以外の事もされたと…気付いてるんだと思う
されたけど…関係ない
あいつら、馬鹿みたいに焦ってたし
男となんてした事ない俺に挿れられる訳もなく
あんなの…ただの子供の遊びと同じだ
でも、夏に言ったら、絶対この世の終わりみたいな顔になる
だから言わない
夏は、俺が思い出して傷つけてしまうとか
そういう理由で聞かないんだろうけど
それならそれでいい
「さてと、食器も洗ったし…」
「掃除する?」
「しねぇよ!」
「何で?」
「お前と掃除する為に休んでんじゃないからだ!」
「じゃ、何するの?」
「ん~…何しようかなぁ?」
ノープランじゃん
「何も考えてないなら、決まるまで俺、掃除しよ」
「えっ?ちょっと、待て!」
夏が後ろから抱き付いてくる
「なっ!離せっ…」
「離さない。1日中こうしてるのもいいよなぁ」
「はあ?俺は、時間を無駄に過ごせないんだ!」
「知ってる。だから、今日だけ特別。俺の為に無駄に過ごしてよ」
「なっ?!は?」
「せっかく休める様になったのに、雪、全然休まないんだもん。あっち行って座って話そ」
「ちょっと…押さないでよ」
ドサッ
「はい、座る~」
「座って話すって、何話すのさ?」
「お前な~。嬉しくないの?何話したって、話してなくたって、隣に座って居られれば嬉しいもんだろ?」
「なっ…夏って……そういう事、彼女に言ったりする訳?俺は無理~。夏って、結構女の扱いに慣れてるよな~」
「は?普通の彼女は、喜んで座るだろが。言う必要ねぇわ。慣れてるって何だよ?」
喜んで座るとか、こいつ自慢してんのか?!
「ドライヤーのかけ方とか。手つきが、すっごくやらしい」
「は…はあ?!手つきがやらしいって何だよ?!ドライヤーなんて彼女にかけた事ねぇわ!」
「え?そうなの?」
じゃあ、単に夏の手つきがやらしいのか
「当たり前だろ!高校生がドライヤー使えるとこ行けるか?!」
「?どっちか1人暮らしとか…別に、私服ならホテル…」
「ええっ?!そ…そっかぁ…凄いな、雪」
「何が。ってか、大学入ってからなんて、遊び放題じゃん?」
「俺が、遊び放題になってるとこ見た事あるか?!」
「いや…俺、あんまり家居ないから…夏が、どれだけ遊んでたかは…」
「だから、遊んでねぇわ!」
ん?
今の話をまとめると…
「あれ?…夏って…もしかして…童…」
「違うわ!シャワー浴びれなかっただけで!って…何でこんな話になんだよ?!」
「夏の手つきが、あんまりやらしかったから」
「はぁ…。やらしいかどうかは知らないけど…前にも言ったけど、俺、雪の髪好きだからな。だからじゃね?」
「やらし」
「おい!そこは、嬉しいだろ!罰として、俺の好きなとこ言え!」
夏の好きなとこなんて…
いっぱいあって…
膝を抱える
「声…」
「え?声?」
「匂い…馬鹿なところ…」
「おい!」
「優しいところ…素直で真っ直ぐなところ…綺麗なところ…俺を……見捨てられないところ…」
「見捨てる訳ないだろ」
夏が肩を寄せて、額にキスをした
「なあ…雪、湯船でイメージトレーニングって、溺死とか…考えてんの?」
肩を寄せたまま夏が聞いてくる
「うん…ダムってね、けっこう死体が沈んでるんだって。死体回収する人には申し訳ないけど、確実だし、飛び降りとか、薬とかより、他の人に迷惑かけないかなぁって」
「どんな…イメージなの?」
夏が、俺の手を握ってくる
「だんだん…深く沈んでって……耳が痛くなるでしょ?それよりもっと沈んでって……太陽なのか月なのか……光が届かなくなって…そしたら、音も光もない世界で、静かに死ねる」
「………そっか。でも、そうなるまで、すげぇ苦しいぞ?」
「うん…でも3分もすれば意識なくなるらしいから。どんなに苦しくても…たった3分で終わるんだ」
「………でも、雪がダムに沈む日は、永遠に来ないよ」
「え?何で?」
夏の顔を見ると
「俺の事、好きになっちゃったからな」
「……何…それ…」
何で…そんな泣きそうな顔……
だから…困るのに……
俺が死んだら、そんな顔するのかと思うと
死ねなくなっちゃうじゃん
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