夏希side

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「はぁ…ったく、ふざけやがって」 ドアの鍵を閉め、荷物を持つ 「ごめんな?雪、寝てたか?」 「………で………の?」 「え?何?よく、聞こえなかった」 「何で夏…怒ってないの?あいつに、あんな事されて、嫌じゃないの?」 「………な…何……嫌じゃない訳じゃないけど……別に…ふざけてるだけだろ?」 「夏は…好きでもない奴に……あんな事されても平気なんだ」 ムカつく 俺が散々心配しても、全然聞いてくれないくせに 何も言わず、荷物をキッチンに運ぶ 「夏!聞いてるの?!」 「聞いてるよ?」 「じゃあ、ちゃんと答えろよ!」 「俺が嫌だって言ったら雪…何か変わるの?」 「え?」 俺が何言ったって、意味ないんだ 自分の事、棚に上げて、勝手な事ばかり…… 玄関に戻り、もう一度荷物を運ぶ 「空閑は、ああいう奴で友達だから、ふざけてるって分かってる。でも、全然知らない奴に、電車の中で痴漢された。って言っ…」 「はあ?!夏…ちゃんと言ったの?そいつ、ちゃんと捕まえてやった?」 「……何で?」 「何でって!そんな事する奴…」 「雪だって、黙ってやらせてたんだろ?」 「お……俺と夏は違うから……」 「……っそ」 痴漢なんかされてない 俺が同じ様な事言っても、ふざけて適当に流してたくせに 荷物を冷蔵庫に入れていく 俺と夏は違う 俺はどうでもいい その考えを変えないと 雪がされて嫌な事は、俺だって嫌だし 心配な事も同じなんだって…… 「……夏が……いいなら、いいんだ。でも…嫌がってる様に見えたから……ごめん…余計な事言った」 ……は?……へ? いやいや ここは、夏の事が心配だから からの、俺だって雪の事が同じ様に心配なんだ ってなって お互い心配かける様な事…しないように気を付けような だろが! 何この、予想外の反応 「いや…実際困ってたから助かったけど……」 「夏は……あいつの事好きなの?」 「……まあ…今日は最悪でしかなかったよな?でも、見えないだろうけど、自分の夢に向かって頑張ってる奴なんだ」 「……っ!そう…じゃあ……嬉しかったよね?ごめん……邪魔して」 「……は??」 なんで…… 雪、泣きそうな顔してんの? 「でも……出来れば今後は…あいつが来る時は、事前に教えて欲しい……」 「いや、連れて来ねぇよ。今日だって、来んなっつってんのに、勝手に付いて来て……まあ、せっかくだから、荷物係にさせたけど」 「いや……連れて来てもいいよ。ただ……俺は、あいつと会いたくないし……夏と…あいつが……っ……」 「雪?…何?雪が会いたくないなら、もう絶対連れて来ないから、安心しろ」 空閑(くが)の奴 何考えてんだ? わざと雪の事怒らせる様に 挑発する様な事して おかげで、見事に嫌われてるぞ? あんなんで、今日は眠れる夜になったのかよ イチゴの残り、今日食べちゃえるけど また貰ってくんなら、スペース開けといた方がいいか 「夏……」 「何?」 「どうしよう……」 そう言って後ろから抱き付いてきた ? いつものアレにしては、全然焦ってる感じないし、尋常じゃない力も入ってない 珍しいパターン 冷蔵庫の整理をしながら答える 「何が?」 「困った事に……気付いた」 「困った事?イチゴのスペースなら作ったぞ」 バタンと冷蔵庫のドアを閉める 「そうじゃなくて……」 俺の首の後ろに、額を付けてくる 「雪?…どっか……体の調子でも悪いのか?」 回してきた腕に手を乗せる 「……俺……夏の事………好き……みたい」 何だ? どうしたんだ?今さら 「ふっ…何だよ?今頃気付いたのか?俺だって雪の事好きだよ?」 「……え?」 いつも心配される側だからか? 空閑のせいで、俺の事心配して、不安になったか? 「嫌いな奴と一緒に暮らしたり出来るかよ」 「っ…そういうんじゃ……なくて」 「そういうんじゃなくて?」 違うのか? 「……っ…だからっ……」 「だから?」 何だ? 「………普通の…友達より……ずっとずっと好きって…事」 「ふっ……だから、分かってるって。俺も雪の事、そう思ってるし」 いつものアレじゃないけど なんか不安なのか? なんか、今日あったのか? 振り返って、顔を見ると…… やっぱり泣きそうだな 今まで全然泣かなかったから、泣いてくれるのはいいが、何が問題だ?
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