夏希side

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夏希side

「…夏」 「ん?」 「ごめんね」 俺の腕の中で もうウトウトしてんのに… 何…考えてんだ? 「……寝る時くらい…何も考えんな」 「うん…」 ビクッ! え?何? 突然雪の体が揺れたと思ったら 俺の胸に顔を埋めてきた 「雪?どうした?」 雪の頭を撫でる 泣いて…ないよな? 「夏…」 「ん?」 「父さんに…会ってみたい」 「……え?」 そんなの…言った事なかったのに 会って…大丈夫なのか? けど… 「…今度、旭陽(あさひ)さんに聞いてみよう?何か知ってるかもしれない」 「……うん」 「でも今は、大人しく寝ろ」 しばらく頭を撫でてると、あっという間に寝た あんなに熟睡してたのに、何で起きたんだ? 全然気付かないで寝てた 俺の知らないところで、雪が何かしてると心臓に悪い あのまま、家出てても気付いてなかった 「…っはぁ~」 父親に…会いたいって事は 雪の中で何かが変わってきてるんだろうか どうでもいいじゃなく ちゃんと…向き合おうとしてんのかな 無意識に… 「…頑張ってるのかな」 いっぱい頭を撫でてやる 終わらせる事しか考えてなかった雪が 何かを始めようとしてる 「…ふっ…嬉し…」 旭陽(あさひ)さんは、雪の父親を知ってるだろうか? じいちゃん、ばあちゃんは絶対知ってる おばさんが、俺達の歳くらいって事は、旭陽さん、まだ学生だったよな 何か、見たり聞いたりしてるかも 雪が知るより前に 名前だけでも確認したい もしも…万が一… 白峰さんだったりしたら…… 知らずに父親と会ってたって事になる 凄くいい人だけど 優しそうな人だけど そういう…問題じゃないと思うから それとも白峰さんに聞いてみる? いや… なんて聞くんだよ? ってか… もし、そうなら気付いてるか ……いや、気付かないか 1度も会った事ないんだもんな 俺から見たら、似てるんだけどなぁ 雪や、おばさんの事 覚えてるのかな? 探してみたりしなかったのかな? おばさんが亡くなった事は 知らないんだろうな… 覚えて…なかったらどうしよう 雪に会っても全然分かんなかったり 嫌な顔…されたら…… やっぱり 先に調べよう 見付かったとして 最低な奴だったら会わせない 「はぁ…白峰さんだったらいいのにな」 そんな知らないけど 雪が、どれだけ恨んで、殴ったりしても 受け止めてくれそう 初めて会った俺の話 あんな一生懸命聞いてくれて 今朝だって… 「……あ」 雪が、行ってらっしゃいって言った時 びっくりしてたのって… 雪…だから…だったりする? 自分の息子に…言ってもらえたから…だったり 待って 待って あの後の白峰さん… びっくりして、それから、行って来ます、って… なんか… 思い返すと… すげぇ幸せそうな顔してなかったか? 「……マジか」 いや…誰にだって言ってもらったら嬉しいか 「ん~…」 雪が、俺の腕から出て、逆を向こうとする 「あ、こら。そっち向いちゃダメだって」 止めると、ゴロンと仰向けになった あ…キスマーク そっと触ると 「んひゃっ…ん~ん…?」 また左向こうとする ってか、もっと色っぽい声出せよ 「こら、そっち向きダメだってのに」 なんで、雪は、こんなに痛がらないんだろう どうでもいいと思ってたとしても 痛いものは痛いだろ 「っつ!カッターで切った!」 「うわっ!柊崎(くきざき)!血!血!」 「きゃ~!痛そう…大丈夫?」 「ヤバっ…ちょっ…大丈夫か?!」 ある日俺がカッターで指を切り 予想外に勢い良く出てくる血に、周りは騒然となった どんどん出てくる血と、痛みと、周りの反応で たかだかカッターで切っただけなのに なんか、凄く不安になってきた時 「何?夏、指切ったの?」 「え?…ああ……」 「…ああ……俺のハンカチ綺麗だから、これでギュッと押さえて」 「何だよ?その、俺のハンカチは汚ないみたいな言い方!」 「いいから、ちゃんと押さえて。保健室行くよ」 「おい、ちょっと待て」 まるで、何て事ないみたいに ほんとに何て事なかったんだけど 雪が来てくれて凄く安心したのと同時に あの血を見て 冷静に止血して保健室に連れてった雪が 少し心配になった 「雪…すげぇ冷静だったな?」 「そう?皆が騒いでるから何事かと思った」 「いや、びっくりするだろ?あんなに血が出てたら」 「傷口小さいもん。大丈夫だよ」 「雪って大人」 「そうかな?」 なんて事はない 雪は、怪我をしても、自分でどうにかしてきたんだ 怖がったり、不安になったりしたところで、誰も助けてくれないから 多分…あんな風に冷静に自分で 「そうしたら…痛みにも強くなるもんなのか?」 結局、向こうを向いたままの雪を抱き寄せると 「やはっ!…んやっ!」 腹の辺り触られて、くすぐったかったんだろうけど 手を払いやがった! こいつ ムカつくな あんな奴等に…どこを…どんな風に触られたんだろう 「雪…」 全部…見られたのかな… 全部…触れられたのかな… 「くそっ…!」 今すぐ、あいつらに触れられた所全部 俺が触れたい 今すぐ、あいつらにされた事全部 俺で上書きしたい けど……そんな事、出来ない…… 「雪っ…」 これ以上… 怖い思い…させたくない 「…っ!」 「はぁ……」 雪の髪…好き 匂い…落ち着く 落ち着け 俺が怖い思いさせてどうする 後ろから、雪の手に手を重ねる 大丈夫 大丈夫 雪は、沢山我慢してきたから 俺と居る間くらい 我慢しなくていい様に…… 大丈夫 大丈夫
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