雪side

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雪side

「雪…ちょっとだけいい?」 俺を後ろから抱き締めた夏が、とんでもない事を聞いてきた 「ちょっ…!ちょっとって…?!」 「分かるだろ?雪が、こういうシチュエーションの時に、彼女にしてきた事だよ」 こんなシチュエーションになったら…… 「なっ…!だ…だめに決まってんだろ?!」 「なんで、決まってんだよ?ってか、雪、どんな事考えたの?やっらし~」 「えっ?!ど…どんな事っ…て……」 そんなの…だって……そりゃ………! 「嘘。雪が嫌がる事は、しない」 夏が、パッと手を離す えっ? 何で… だって…こんな時の嫌なんて…嫌じゃないだろ? そんなの…分かんないの? それとも本当は…やっぱ男とか考えられない… ってか…俺とは…考えられないとか…… 「…な……夏が…したい…なら…いいよ…嫌じゃ…ない」 こんな事…言わせるなよ! メチャクチャ恥ずい! 「……え?…いや……ちょっと俺まだ勉強不足で…」 は? 「キスより先は…」 何その理由 「まだ…」 ただ、俺としたくないだけじゃん 「え?」 ドサッ 夏を押し倒して、上に乗っかる ムカつく 「あ…あれ?…雪?」 何、とぼけてんの? 「出来る事で…いいじゃん。したいんだろ?」 あいつには 好きなようにさせといて 「……え?!いや!……し…したくない!」 したくないって言いやがった! 「は?!したくない?!」 何で… 「えっ?あ…いや……そうじゃなくて…」 知ってる… 「俺は…夏としたいよ」 夏は、同情だって気付いてないだけだから でも、同情だろうが何だろうが、今は俺の彼氏だろ? なんで、あいつには許しといて… ゆっくり夏の顔に近付いてくと 「待った~!」 止められた 「…何?」 「いや…ちょっと…今はまだ……早いって言うか…」 視線が…左頬… 「夏…やっぱ童…」 「違うわ!そうじゃなくて…」 この顔……ああ…… なんだ… 俺が襲われた事も気にしてんのか 「夏…俺…怖くないよ?」 優し過ぎて困る 許せないとか思ってくれてんなら さっさと抱いてくれればいいのに 夏は…一生俺を抱いてくれない気がする もう一度顔を近付けると、今度は顔を掴まれた 「何っ?!」 「ダメだ。お前が、ちゃんと怖いものは怖いと、言える様になるまで、おあずけ」 「はあ?!俺、大抵のもの怖くないんだから、それじゃ一生何にも出来ないよ?」 ほらね 「いいよ」 「いいよって?!…うわっ!」 夏に引っ張られて、夏の上に倒されると、抱き締めてきた 「雪が、怖い事も、嫌な事も、全部言える様になって……それでも、怖くも嫌でもなかったらにしよ?」 「だから、そんな日は来ないってば!」 ムカつく 優しくてずるい 「来るよ。雪は、ちゃんと変われる」 「そんなものに気付いたら……生きてくのに邪魔でしかないよ」 「1人で生きてこうとするからだろ」 俺は…まだ 長く生きてられる自信がない だって…まだ死にたいって思うから 「雪。怪我したら痛いんだ。男だろうが、大人だろうが、怖いものは怖いんだ…」 なんか、余計な講釈が始まった 俺には…時間が沢山ある訳じゃないのに そうじゃなくたって 夏といつまで一緒に居られるかなんて 分からないのに 「…ちゃんと、雪が雪の事考えて、俺に甘えられる様になったら、キスの先してよ」 意地悪で言ってるんじゃないから、嫌になる 「……そんなんじゃ夏は一生、童…んっ?」 夏が頭にキスをしてくる 「それまでは、いっぱいキスしとこ」 「……そんな事言って…さっきからずっと、当たってるんですけど」 一応、こんな風になる位には 俺で興奮出来るんだ 「そりゃ、好きな人に、あんな顔でせまられたらね。雪は…」 夏が、太ももを触ろうとする 「さ…触ろうとするな!」 夏の上に起き上がる そんなとこ触られたら、俺だってヤバい 「ははっ」 「ど…どうすんだよ?!それ!」 難しい事考えないで、好きにすればいいのに 「俺、自制出来る男だから大丈夫だけど…雪が協力してくれるなら、髪の匂い嗅がせてくれる?」 「は?髪の匂い?」 「うん。雪の髪の匂い嗅ぐと落ち着くから」 ……やっぱこいつ、変だな 「ふっ…俺の彼氏、全然優しくないじゃん。雪、ちょっとどけて?さすがに、雪にそんな体勢で見られたままじゃ、収まらない」 「あっ…ごめん」 そりゃそうだ 夏の上からどける 「ありがと」 馬鹿じゃないの? 彼氏だと思ってんなら もっと他に協力出来る事あるだろが 夏に、背中を向けて横になる 「もう少し寝るのか?左下にすんなって」 俺の事じゃなくて、自分の事考えろよ 「……髪の匂いくらい……嗅げばいいだろ?」 「…え?」 何?その意外そうな反応 「そんな事くらい…我慢させる程……意地悪じゃないし」 こんなんでいいなら いくらでも嗅げよ、変態 「ありがと」 夏が髪に顔を寄せて抱き締めてくる 「抱き締めてもいいなんて、言ってないぞ」 「ごめん」 夏が、すぐに手を離す 「なっ…!馬鹿じゃないの?聞けばいいじゃん?!」 何なの?こいつ! 「抱き締めてもいいですか?」 敬語…ふざけやがって 「い…いいけど?」 「ありがと。でも、嫌な事はちゃんと言って」 うるさい! 好きにすればいいだろが! 「当たり前だ!…ってか、その髪も、ベンチで寝てた髪だぞ」 「…そうだった。もう…遅い」 潔癖の変態め 「ったく。俺の髪の、何がそんなにいいんだか。変態め!」 ちゃんと俺の事好きじゃないくせに… こんなのされたら どんどん好きになってくだろが 他の事…考えられなくなる そんな風になって 置いてかれたら 俺は… 誰の迷惑も考えずに死ぬんじゃないかな
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