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悠
「…ゆう?はるか?」
「ちか。読めないだろ?」
「悠…さん?は、俺達より上ですか?」
「雪の1個上。雅斗は2個上。けど、雪も呼び捨てだし、悠でいいよ。夏は、雪と同い年?」
「はい。高3の時、クラス一緒で…志望校同じで、ずっと一緒に勉強して…」
あの時は…
死ぬ事なんて考えてなかった
「…雨の中…横断歩道の真ん中に突っ立ったまま動かなかった雪を、雅斗が連れて来たんだ。1週間位俺達と一緒に暮らしてた。最初の頃、何度か死のうとしてた」
「っ…そう…ですか」
「けど…他は、夏が心配する様な事…何もなかったから。ずっと俺か雅斗が一緒に居たし…俺と雅斗は恋人同士なんだ」
「…え?」
「だから…そういう意味でも、夏が心配する様な事は、何もなかった。一応、報告」
ああ…
だから、そういう話大丈夫なんだ
良かった…
あの時の1週間…ずっと気になってた
もしかして、あの時みたいに、襲われたりとか…
「……その子、今まで男との経験は?」
空閑の質問に、即答出来なかった…
けど…
「~~っ良かっ…」
こんなに…心配してくれる人達のとこに居たんだ
「…っありがっ…ござっ…うっ…」
あの時…
見付けた時、怪我は見当たらなかったけど
「…ありがとっ…ございっ…」
3日前に何があったのか
5日前には怪我してたのか
何にも…分かんないままだったから……
「夏……お前…よく1人で……おいで」
悠が、抱き寄せてくれる
雅斗に怒られないか?
「いいか?俺は、こう見えて一途だからな。雅斗以外に胸貸してやるなんて、すげぇレアだからな?」
「……っくっ……ありがっ…ござっ…ます」
「…そうだな…お前達ちょっと…特別な存在になり過ぎて…自信なくすのも、分からなくもないな」
分かってくれる…
こんな…自分でもよく分かんない事…
「…ふっ…う~っ…」
「よしよし。夏は、よく頑張ってる。あんな面倒な奴、さっさと手放しちゃえればいいのにな?死にたいのに、気持ち伝えるとか、なんだよ?ふざけてんな?」
「…うっ…うっ……」
コクコクと頷く
凄い…
こんなに分かってくれる
「なのに、受け入れてくれた夏の気持ち、試す様な事言って?腹立つな?あいつ」
悠…すげぇ分かってくれる
悠に…聞いてみようかな
「…悠…聞きたいっ…事っ…ある」
「何だ?」
「……男がっ…男のっ…経験っ…ない奴とっ……」
くそっ…
悠の服をぎゅっと握る
「…ああ。まだなのか。検索すると、今なら普通に調べられると思うけど、今度ゆっくり教えようか?」
「~~っ!違っ…くっ…って!」
「…え?違うの?」
「…っく……無理矢理っ!…ヤろうとっ…したらっ……~~っ…どんな事っ…するの?」
「………え?何で…そんな……え?」
知りたくないけど…知りたい
聞きたくないけど…聞きたい
「…っく…はぁ…っ………悠…っ俺のっ…せいで…」
「…うん?」
「…俺がっ……ちゃんとっ…見てなかった…っからっ…」
「…夏?」
「…たった…うっ…たった何分かっ……雪っ…うぅっ…居なくっ…なってっ…」
「っ…分かった。夏…もう分かった」
そう言って、悠が抱き締めてくれる
「…ふっ…うっ…ごめんっ……俺がっ…早くっ…」
「~~っ…うん」
「…俺がっ…逆からっ…探しっ…ちゃった…から…」
「っ…うん」
悠が、黙って聞いてくれる
俺のせいじゃないって言わないで聞いてくれる
「ごめっ…1人にして……ごめっ…~っ…早く…見付けられなくて…ごめっ…」
「うん…分かった…」
「ごめんなさっ…」
「うん…分かった。分かったよ」
悠が、頭とか、背中とか
優しく撫でてくれる
「~っ…雪っ…何も…言わないっ……でもっ…両手…手首にっ……指の跡っ」
「…っ…そっか」
「腰っ…背中……縦にっ…~っ擦られた傷跡っ…あってっ…」
「うん…うん…」
「雪っ…何っ…されたの?…っく…悠っ…顔っ殴られてっ…ナイフでっ…左頬っ切られてっ…」
「…夏…」
あの時の…光景が…
「Tシャツっ…ビリビリにっ…切り裂かれてっ!」
「っ…うん…」
「ごみっ…捨て場っ…倒れてっ…~~っ!雪っ…死んでるっ……思っ…ふっ…うぅ~~」
「夏…お前…よく…1人で頑張ったな。よく…頑張った」
「うっ…悠っ…雪っ…怖かったっ…よね?痛かったっ…よね?雪っ…酔ってて…抵抗っ…出来なっ…悔しかった…ね?」
後悔しても後悔しても
いくら謝っても…どうにもならない
「…そうかもしんないけど…夏。お前も大事。お前…そんなの1人で抱えてたら…壊れちゃうぞ?雪は…そりゃ、痛いし、屈辱的だったとは思うけど…夏が思うよりは、怖がってなさそうな気がする」
「雪っ…全然っ…俺よりっ…冷静で……」
「…そんな気がする」
悠が、体を離して目を見てくる
「それが雅斗だったらって考えたら、気にするなって言われたって、そんなの無理だし、そいつら見付けて、もっと酷い目に合わせてやりたいって思う」
「うっ…うぅっ…!」
「でも…誰かが言わなきゃ、進めないから言ってやる。そんな事、さっさと頭の奥に追いやれ」
無理だ…
「…っ忘れっ…られないっ…」
「分かってる。だから…他の事で埋め尽くせ。夏にとっても、雪にとっても…そんなの思い出すスペースない位…もっと楽しい事とか、大切な思い出作って…そんなの思い出せなくなる位……そしたら…お前らの勝ちだろ?」
「うっ…っく…出来るっ…かなっ…」
「出来る。夏…すげぇ強くて優しいもん。雪なんか、ベタ惚れだ」
「っく…ベタ…惚れ」
結局…雪が何をされたのか、悠から聞き出す事は出来なかったけど
知っても…知らなくても…
俺がやるべき事は
変わらないって事…なのかな
「…ごめっ…っく…服っ…びしょびしょ」
悠から体を離す
「いいよ。少しは…すっきりした?」
「はっ…い…だいぶ。ありがっ…とうございます」
「夏…我慢し過ぎ。溜め込み過ぎ。溜まったら吐き出さなきゃ、先に夏が壊れるぞ」
「っ…はい」
分かってる…つもりなんだけど…
「今度からは、溜め込む前に、俺に連絡しろ。あと…お前ら、未成年なのに、酒飲んでんのか?」
「雪っ…合コンでっ…飲まされてっ…」
「へぇ?死にたい奴が、合コンね~?あいつに酒飲ませたら、大変じゃなかった?」
「家っ…帰って来てっ……まだ友達っ…のにっ…キスされっ…」
「やっぱり。俺らも、大学の先輩達が遊びに来てた時、雪間違って酒飲んじゃって…誰彼構わずキスしようとして、俺と雅斗で必死に止めた。お前は絶対に酒飲むなって、言っといたのに、あいつ!」
その時、言われてたんだ
「雪っ…ちゃんと覚えてっ…ました。騙されっ…飲んじゃって」
「へぇ?んじゃ、分かったな?成人しても、嫌な思いしたくなかったら、あいつを合コンには絶対に行かせない方がいいぞ」
「…はい」
成人した時…
雪の隣に俺は…ちゃんと居るだろうか
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