悠side

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「…ごめっ…っく…服っ…びしょびしょ」 夏が俺から離れる 「いいよ。少しは…すっきりした?」 全然こんなんじゃ足りないし 問題山積み過ぎるけど 「はっ…い…だいぶ。ありがっ…とうございます」 「夏…我慢し過ぎ。溜め込み過ぎ。溜まったら吐き出さなきゃ、先に夏が壊れるぞ」 「っ…はい」 なんでこんな素直で優しい奴が 雪なんか好きになっちゃったかな 苦労しか見えない 「今度からは、溜め込む前に、俺に連絡しろ。あと…お前ら、未成年なのに、酒飲んでんのか?」 聞くと、合コンで飲まされたと 死にたい奴が、夏を置いて合コンだ? ほんっと、ムカつく奴! 夏も許すなよ! ほんと…優し過ぎ! 「ははっ。夏の顔びしょびしょだな。睫毛付いてる。ちょっと、じっとしてて」 「…っ…ん」 左目の…すぐ下 取ろうとすると、夏が動く 取れそう…なとこで夏が動く 「…ん?…ははっ…夏、全然じっとしてくんないし」 「うっ…すいません…っ…取れなかったっ…ら、いいです」 「ちょい待ち」 わざとじゃなく、泣きじゃくってんだから、しょうがない 夏の顔を押さえようと、左耳の辺りに手を添えると 「んっ…!」 夏が俺の服を掴んできた あれ? 「え?」 「~っ…耳っ…はっ…」 これは… この反応は…… 「……え?」 手を離そうとした時 「夏!」 「……え?」 反射的に手を離す 雪?と…そっか 雅斗のGPSで 「何?!(ちか)に何されてたの?!」 雪が夏をぐいっと抱き寄せて吠えてくる 「お前…っ…」 左頬… これが…夏の言ってた… 「人聞き悪い事言うな!」 ベンチから立って、雅斗の傍に行く まだ… 傷治ってないくらい 最近の事だったんだ 「なっ…何でこんな泣いてんだよ?!(ちか)!白状しろよ!」 うるせぇ 「めんどくせぇな。雅斗、行こ」 「あ!逃げるなよ!」 「雪。突然俺のとこ飛び込んで来たんだ。夏が不安なの分かるだろ?ちゃんと説明するんだぞ?」 雅斗が言うと 「うっ……うん」 大人しく頷いた こいつ! 「よし。じゃな、雪」 「もう、見付けても、雅斗に飛び付くなよ?!」 「(ちか)には関係ないもん」 「おい!」 いちいちムカつく奴だな! 「悠、行くよ」 「ったく!あいつの、俺への態度どうよ?!」 「いいから、行くよ」 公園から出ると 「(ちか)…夏、雪の怪我の事…なんか言ってた?」 「雪…雅斗には何も言わなかったのか?」 「彼女取られたって逆上した奴に、突然殴られたって。カッターまで持って来てたって…でも…誤解解けたし、面倒だから警察にも…病院にも行ってないって…」 「夏…俺に、男が男の経験ない奴と、無理矢理ヤろうとしたら、どんな事するの?って聞いてきたんだ」 「……え?」 雅斗が立ち止まる 「夏の話をまとめると…酔っ払った雪を置いて、何分か目を離した間に、連れ去られたみたいで……雪は何にも言わないらくて…ごみ捨て場に倒れてて…死んでると思った…そうだ」 「……え」 「雪は、今でもまだ死にたがってるみたいで、夏は、普通の人なら気にしない事にも…多分怯えてる。それなのに……っ」 「(ちか)……ちょっと…こっち」 雅斗に、店の横の隙間の様なとこに連れてかれると 「(ちか)……大丈夫?」 そう言って、抱き締めてきた 「え?大丈夫って…俺が?」 「…雪は…俺に似てるから……夏と…悠の立場も……よく似てるから……」 雅斗…… ぎゅっと雅斗を抱き締める 「夏は…優しくて強い。俺だったら…気が狂ってる。そういう事されたって分かる状態じゃなかったみたいで…色んな跡を見て夏は……俺だったら、雅斗に…問い詰めたかもしれない。けど……あいつは…雪にも聞けないで、誰にも言えないで……1人でずっと抱えてて……」 「うん…」 「俺に…謝ってきたんだ。雪に…謝りたいけど、謝れないから…俺に………ごめん、雅斗。夏の事、抱き締めてやったんだ」 「そっか……(ちか)は、夏の気持ちよく分かるだろうから…きっと夏、嬉しかったと思うよ」 あ、そうだ 雅斗から離れる 「雅斗。俺、夏に連絡先教えた。その…男同士の悩み…とかもあるけど…俺達は、雪が死にたいって思ってるの知ってるから。そういうの、言える人、居た方がいいかなって思って…でも、雅斗が嫌だったら…」 「嫌じゃない。俺も、教えたいくらいだ。はぁ…雪…咄嗟にあんな嘘で誤魔化すくらいには…俺の事心配させたくないと思ってんのかな。堂々と死のうとしてたのに、少しは変わったのかな?」 変わってはいるけど 「色々考えてる事あるみたいで、それ片付けてから死ぬつもりらしいぞ」 「雪…そんな事、夏に言ってるの?」 「夏の優しさに甘え過ぎ。あれじゃ…雪より先に夏が壊れる」 「そうだね……夏…ちゃんと相談してくれればいいけど…」 「ま、俺らが考えててもどうしようもないし、行こ」 元の通りに出ようと歩き出した時 「…(ちか)」 「何?」 「あ…えっと……その…悠の事信じてるし、疑がってる訳じゃないんだけど…一応……確認したくて……」 あ…雪が怒ってたやつか でも、可愛いから、気付かないふりしよ 「確認?なんの?」 「えっと…雪が、声掛けた時…夏と…向かい合って……けっこう距離…近かったし…なんか…なんか夏の…声が…なんか…」 可愛い過ぎて無理 ガバッと雅斗に抱き付く 「えっ?(ちか)?」 「ごめん。雅斗が妬いてくれるなんて、あんまりないから、ちょっと意地悪した」 「え…えっ?」 「泣きじゃくってる夏の顔に付いてた睫毛、取ってあげようとしたけど、動くから取れなくて。顔押さえたら、夏も耳弱いみたいでさ。夏のあんな声聞いたら、雅斗の顔が浮かんできて……ヤバかった」 「ええっ?!」 その後、本物の雅斗が登場したから メチャクチャ恥ずかしかった のは黙っておこう 「ね、家帰ったら、本物聞かせてくれる?」 「ほっ…本物って……」 「ま、雅斗のがもっと可愛いくて…やらしいけど」 「ええっ?!や…やらし…」 可愛い~ 雅斗が大好き 今はもう…出会った頃の影は…… だいぶ消えたと思う それでも不安はある だから… 夏がどれだけ苦しいか分かる 「行こ、雅斗。早く帰って、雅斗のやらしい声、いっぱい聞かなきゃ」 「えっ…行くけど…声は…ちょっと…」 「心配しなくていいよ。雅斗が勝手に出しちゃうようにしてあげるから」 「か…勝手に?!」 雪と夏も… 「俺に、そういう事されるの…嫌?」 「いっ…嫌じゃ……ない」 いつかは 気付いたら色んな余計な事 忘れちゃうくらいに 「可愛い」 チュッ そう なれるといいな…夏…
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