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彩雪side
「行ってらっしゃい」
か…感動~~!!
多分だけど
確定じゃないけど
我が子に、行ってらっしゃいされた!!
可愛いかったな~
「白峰!」
「はっ!…何?葉山」
「何じゃねぇよ。全然昼飯食わねぇわ、ぼーっとするわ、ニヤつくわ。大丈夫か?」
「大丈夫。凄くいい事あったんだ~♪︎」
「へ~?お前が、そんな浮かれるなんて珍しいな。よっぽどいい事なんだろな」
「うん!」
偶然だけど、嬉しいもんだなぁ
いや……そんな浮かれてちゃダメなんだけど
でもなぁ…
なんか力になるって言っても
ただの近所のおじさんだし
「はぁ……」
いや!
逆に近所のおじさんだから、何か出来るのでは?!
そうだよ!
柊崎君みたいに、ちょっとした相談乗ってあげたり
そんな事くらいでも……
何か…役に立てれば……
「いえ……俺も、全然余裕のない家だったので、なんか分かります」
今さら……
あの子の子供時代をどうにかしてあげる事は出来ないけど……
大学行く為に友達と住んでるんだよな
真優…元気かな……
「はぁ~…」
「…ちょっと……お前の情緒、大丈夫?」
「え?情緒?」
「ニヤニヤしてると思ったら溜め息吐いてるし、ハンバーグは切り刻まれ過ぎて、ミンチになってるし」
「あっ!…」
「なんか悩みなら聞くぞ?お前の奢りで」
「………悩みは…いいから、普通に飲も」
「お前の奢りで?」
「はいはい。俺の奢りでいいから」
誰かに……
話してしまいたくなる
でも……
自分だけ救わるみたいで…話せない
だけどほんとは
話して自分が軽蔑されるのが
怖いだけかもしれない
「かんぱ~い!」
「乾杯。お疲れ」
「お前、誘っても、なかなか飲みに行かないからな~」
「ははっ。苦手なんだ。飲みの席」
色んな話…しなきゃなんないから
適当に…嘘吐けばいいんだろうけど
それは……真優とあの子の存在を否定する様で……最悪な気分になる
「白峰って、けっこう人気あんのに、もったいねぇな~」
「人気?何言ってんだよ。俺達もう、オッサンだぞ?」
「アラフォーか~。見えねぇな、お前。20代で、全然通るぞ?」
「嬉しくないよ。20代の時は、酒買う時、すっごく不審がられてた」
「あ~。そりゃそうだ」
真優との事……
後悔した事はない
けど……
真優とあの子への無責任さには
ずっと後悔してる
「……葉山…」
「ん?」
「俺……実は内緒にしてる事があってさ……」
「お?カミングアウトか?聞くぞ」
「詳しくは、言えないんだけど……俺さ……最低な人間なんだ」
「は?」
「俺……大切な人達…不幸にしておいて……のうのうと生きてる……最低な奴なんだよね…」
「……っそ……じゃあ、まあ飲め」
「え?」
「お前が誰をどうして不幸にしたのか、俺は知らんし関係ない。俺はお前の同期で友達だ。友達にくらい、思いっきり酔っ払って愚痴って、そん時くらい嫌な事忘れろよ。明日は会社休みだし、ちゃんと家まで送ってやるから。1人で抱え過ぎるから、ミンチハンバーグなんて物が出来上がんだよ」
「葉山……嫌な事ではないんだ。だから、忘れたいと思った事もない」
それは…本当だから
「………ふっ。分かった。お前ん家に行くぞ!」
「えっ?」
「お前が、そんなに忘れたくない大切な人の話、聞かせろよ」
「……いや…知らない所で、そういう話されるのって……失礼じゃ…ないかな……」
「じゃ、俺だけだ。世界にたった1人くらい、話せる人間作れ」
葉山は……全然知らない人だし
いいかな……
「……うん」
「よ~し!さあ、俺を案内したまえ!」
「ここ?お前、家は貧乏だったからとか言って、結構いいとこ住んでんじゃねぇか!」
「いや。俺の家は本当に貧乏だったよ。けど、はとこ?の家が不動産関係の仕事やってて、結構余裕のある家なんだけど。ここに住んでたはとこが、別のとこに住むから、どうだ?って声掛けてくれて、破格の家賃で借りてんだよ」
「へぇ~?運のいい奴め」
運のいい……
確かに……
ここに住めたから、あの子に会う事が出来た
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