雪side

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雪side

「さ、そろそろ寝るか」 「一緒に?」 「一緒に寝るのはいいけど…雪寝れるかな…」 「寝れなくたっていいよ。どうせ休みなんだし」 「まあ…それもそうか。どっちで寝る?」 「夏のベッド!」 「雪は奥だ」 「なんで?」 「…左向いてる時間…短い方がいいだろ」 どういう事? 「じゃ、電気消すぞ?」 「うん。夏、明日何時に起きるの?」 「昼からの講義だから、ゆっくりだ」 「そっか」 あ... そういう事か 夏の方向いて寝るのが右向きだから 1人で寝る時に、頬っぺの怪我なんて、気にした事ないのに 「夏…」 「何?」 「もっとくっ付いてもいい?」 「いいよ」 「へへっ」 夏の胸の中に潜る 「暑くなるぞ?」 「大丈夫。俺、布団に潜って寝るの得意」 「へぇ~?そんな得意あったのか」 「うん」 夏が抱き締めてくれる 「夏…」 「今度は何だ?」 「空閑(くが)と…誰とも、こないだみたいなの…ふざけてでもしないで欲しい」 「分かった」 「あと…耳に防犯ブザー付けといて」 「無理だな」 「……うん」 分かってるけど… 嫌なんだもん 「んやっ…え?何?」 夏が、服の中に手を入れて 腰の辺りを触ってきた 「雪なんか、あちこちだろ?」 そう言って、背中の色んなとこ触り始めた 「んっ…やっ……手…んんっ…」 「俺だって、雪のこんな声、誰にも聞かせたくないって思うよ?でも…キリがないだろ?一生ずっと見張ってる訳にいかないんだから」 夏が、服の中から手を出して、頭を撫でる 「だからさ。信用するしかないんだよ。その為に、一緒に居る時は、信用出来るって思う事する」 「…夏…俺も…付けていい?印」 「…いいけど…今の話聞いてた?なんか、全然信用されてなんですけど」 「しょうがないだろ?目の前であんなの…見せてきた奴のとこ…行くんだろ?」 「ああ…まあ……雪にとっては、そういう印象しかないもんな」 夏がぎゅ~っと抱き締めてくる 「これじゃ、付けれないよ」 俺の頭に顔を付けてくる 「今朝、雪が居なくなって…俺、どうしたらいいのか分かんなくなって……」 あ... 「うん…」 大人しく聞いておくか 「手…震えて、上手く動かなくて…」 え? 夏…そんなに… 「ようやく電話出来て、出たあいつが、散歩じゃねぇの?って言ったんだ」 え? なんかムカつくな 「俺…そんなの行った事ないって言ったら、今日が初めての散歩なんじゃねぇの?って…なんも知らないから、ふざけやがってと思ったんだけどさ。そんな形で、夏希の前から消えるって事はないだろって…すげぇ自信有り気に言うの」 「ふ~ん?適当な奴」 お前なんかに分かってたまるか 「なんでそう思うんだ?って言ったら、昨日お前らを見たからって言うんだ」 「はあ?」 「なんで、お前には分かんないんだろうなって…そしたら、ほんとに雪は散歩に行ってただけで…安心したけど、ムカついた」 「夏が心配し過ぎなんだよ。普通に考えたら散歩だろ」 俺が、夏を…そういう意味で好きなんだって 確認する様に、ずっとこっち見てた ムカつく! 「でもさ。あの時って別にまだ、お互いの気持ちとか…全然伝えてなかったのにさ。空閑(くが)には、そんな風に見えたのかって思ったら…ちょっと嬉しかったって言うか…」 そりゃ、夏はあいつが、ニヤニヤしながら俺を見てたのも 俺がその間、キレてたのも知らないからね 「だからさ。そういう奴なんだよ。ふざけてんだけど、なんて言うか…俺の気付いてない様な事、ちゃんと見えてるって言うか……」 バカ夏 俺を安心させようと思ったんだろうけど 余計ムカついて心配だわ さすがに… 見える位置は、可哀想か… じゃあ、ちょっとずらしたら見える辺りにするか 「夏、ちょっと緩めて。動けない」 「……これだけ言っても、まだ付けるか」 「違うよ、夏。そんなに聞いちゃったら、付けるしかないでしょ」 「う~ん…お前の思考が分からん。ほら」 夏が腕を緩める 肩の辺りのシャツを少しずらす 「ここに付けてもいい?」 「何処だっていいよ。雪の安心出来るとこにしろよ」 「え……」 「何?」 「夏って…すげぇ優しい彼氏」 「今頃気付いたか」 「うん...」 チュッ う~ん… 上手く力が入らないな 「夏、ちょっと仰向けになって」 「はいはい」 あれ? 夏が仰向けになる なんで夏…普通なんだ? 「何?」 「なんで、夏…そんな普通なの?」 「何でと言われても...雪のが異常なんだって」 嘘だろ? 俺、あんなに… くそっ 上手く力、入らなかったせいだ 「ん…ふ……ん…」 どうだ?どうだ? 「なんか…雪、一生懸命で可愛い」 え? 俺の頭を撫でてきた なんでこいつ、そんな余裕なの?! 「ん…ん…ふっ……んっ……」 この!この!この! なんで俺の方が大変な感じになってんだよ! 頭撫でんな! 余裕かますな! ヂュッ 「はぁ…はぁ…はぁ…な……はぁ…なんで!そんな余裕なんだよ!」 「え?何で...そんなキレてんの?」 「く…はぁ…くそっ!」 仕返ししてやろうと思ったのに! 付けられる側が、どんなか知りやがれ! と思ったのに 「はぁ…疲れた…もう寝る」 夏に背中を向けて寝ると 後ろから抱き締めてくる 「雪…可愛いかった」 「馬鹿にしてんだろ」 「雪…いつもあんな一生懸命なの?」 「……違うもん…夏にも…付けられる側が大変なの…分からせてやろうと思ったのに…」 夏の耳以外は異常なんだ 「そっか。それで、あんな頑張ってくれたんだ」 「頑張ってくれたとか言うな!キモい!」 「でも俺、付けられるの初めてじゃないし、多分…雪が、どんなに頑張っても、雪みたいになる事はないと思うよ?」 え? 「は…初めてじゃないの?!」 「え?…うん...なんで、そんな驚くの?」 「いや…」 なんとなく… 女子が付けられる側というイメージが… え? 「ま…まさか…夏……男とも付き合った事あんの?あ!空閑(くが)か!空閑に付けられた事あんの?!」 くるっと夏の方を向く 「ふっ…どっちもない。普通に女の子と付き合ってた時だよ」 「ふ~ん?」 そんな女の子も居るんだな 「何?まだ疑ってんの?」 「いや…あんまり女の子がって、イメージがなくて…」 「そ?嫉妬深い子とか、独占欲強い子なら、珍しくないんじゃない?」 「……夏って…ちょいちょい俺はモテますアピールしてくるよな?」 「はあ?今のどこがモテますアピールだよ?」 「すげぇ嫉妬される位好きになられたり、独占したくなる位好きになられた事がありますって事だろ?しかも、数ある中には…って感じを匂わしてくる」 「それは…いい人と巡り合えなかったっていう…ちょっと凹むカミングアウトだろが」 あれ? なんか ほんとに、ちょっと寂しそうに笑ってる
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