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腹が立つ
あいつ…ずっと夏だけじゃなく、俺の反応も楽しんでるかの様だった
あんな事しておいて、悪びれもなく
明日また、夏に会える約束をした
腹が立つ
恋人じゃないなら、雪も触れないね？
腹が立つ！！
「はぁ…ったく、ふざけやがって」
夏がドアの鍵を閉めて、玄関の荷物を持つ
なんで……普通にしてるの？
そんな……
あんな事、慣れてるみたいに……
「ごめんな？雪、寝てたか？」
なんで、あんな事されて普通なの？
「………で………の？」
「え？何？よく、聞こえなかった」
「何で夏…怒ってないの？あいつに、あんな事されて、嫌じゃないの？」
「………な…何……嫌じゃない訳じゃないけど……別に…ふざけてるだけだろ？」
いつもの、ふざけてるが、あれ？
あんな事、あいつに…いつもされてるの？
なんで……許しちゃうの？
「夏は…好きでもない奴に……あんな事されても平気なんだ」
あいつは絶対、夏の事、そういう意味で……
あんな事されて怒らないって、夏ももしかして……
俺の質問に答えず、夏が荷物をキッチンに運びだす
「夏！聞いてるの？！」
「聞いてるよ？」
なんで……
ちゃんと……答えて
「じゃあ、ちゃんと答えろよ！」
「俺が嫌だって言ったら雪…何か変わるの？」
「え？」
どういう意味？
「空閑は、ああいう奴で友達だから、ふざけてるって分かってる。でも、全然知らない奴に、電車の中で痴漢された」
え？
「って言っ…」
「はあ？！夏…ちゃんと言ったの？そいつ、ちゃんと捕まえてやった？」
あいつだけじゃなくて……
全然知らない奴に……
「……何で？」
「何でって！そんな事する奴…」
「雪だって、黙ってやらせてたんだろ？」
「お……俺と夏は違うから……」
「……っそ」
夏が、荷物を冷蔵庫に入れていく
怒っ…た？
あいつが…夏にとっては大切な…奴だから……
俺が…悪く言ったから……
どうしよう
嫌われちゃう……
「……夏が……いいなら、いいんだ。でも…嫌がってる様に見えたから……ごめん…余計な事言った」
「いや…実際困ってたから助かったけど……」
「夏は……あいつの事好きなの？」
「……まあ…今日は最悪でしかなかったよな？でも、見えないだろうけど、自分の夢に向かって頑張ってる奴なんだ」
夢に向かって……
頑張って……生きてる奴
っ！
そりゃ……
どんな奴だろうと
俺よりマシだ
「……っ！そう…じゃあ……嬉しかったよね？ごめん……邪魔して」
「……は？？」
何これ
凄く……なんだろ
体中の中身が落ちてく様な……
体の…殻だけで…立ってる様な……
「でも……出来れば今後は…あいつが来る時は、事前に教えて欲しい……」
どうしよう
体が震える
「いや、連れて来ねぇよ。今日だって、来んなっつってんのに、勝手に付いて来て……まあ、せっかくだから、荷物係にさせたけど」
なんか……
夏の声が……全部通りすぎていく
「……連れて来てもいいよ。ただ……俺は、あいつと会いたくないし……夏と…あいつが……っ……」
夏とあいつが、抱き合ってるとこなんて
もう……見たくない
夏が……
あいつに触れられて
あいつにしがみ付くとこ
見たくない
「雪？…何？雪が会いたくないなら、もう絶対連れて来ないから、安心しろ」
何で……こんなに……
泣きそう……
子供の、我が儘みたいなもの？
自分の所有物取られるみたいな？
違う
あいつの…
明らかに、そういう意味で夏を奪ってやるみたいなあの目にムカついた
多分、夏が嫌がってなくても
夏が、あいつを好き…だと言っても
俺は許せない
夏を……触れさせたくない
他の誰にも……触れさせたくない
「夏……」
「何？」
「どうしよう……」
誰とも深くなんて関わるべきじゃないのに
夏の後ろから抱き付く
夏が冷蔵庫の整理をしながら答える
「何が？」
恋愛感情なんて…
絶対ダメなのに
「困った事に……気付いた」
1番悩ませちゃダメな人を……
好きに……
「困った事？イチゴのスペースなら作ったぞ」
夏が、バタンと冷蔵庫のドアを閉める
「そうじゃなくて……」
夏の首の後ろに、額をくっ付ける
どうしよう……
どうしよう……
「雪？…どっか……体の調子でも悪いのか？」
夏が、前に回した俺の腕に、手を乗せる
「……俺……夏の事………好き……みたい」
ずるいと思う
あいつの気持ち知ってて
でも…気付いちゃったんだから
お前のせいなんだから
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