雪side

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「ふっ…何だよ?今頃気付いたのか?俺だって雪の事好きだよ?」 「……え?」 嘘……? 「嫌いな奴と一緒に暮らしたり出来るかよ」 っ! 「っ…そういうんじゃ……なくて」 「そういうんじゃなくて?」 夏は……全然…… 俺の事…… 「……っ…だからっ……」 「だから?」 俺を…そういう対象としては…… そりゃそうだ 俺だって今気付いて まだ信じられなくて 「………普通の…友達より……ずっとずっと好きって…事」 「ふっ……だから、分かってるって。俺も雪の事、そう思ってるし」 そう言って、夏が振り返る 「雪、何が不安?」 何が…… 死ぬ時に、思いを……整理出来なくなるのが… 「……俺が……誰かに強く思われたり、思ったりするのが……」 こんな…… 強い気持ち お互い持ってしまったら…… 「何で?いい事だろ?」 「……死ぬ時…お互い辛いだろ?」 きっと…… 死ねなくなる 「雪……俺は、じいちゃんになった雪と、昔話をしたい」 じいちゃん……?! それまで…… ずっと、この顔と体を生かしとくなんて…… 「……ごめん……それは、別の人に…」 「俺は、雪と、じいちゃんになっても、話してたい」 「……だから……俺じゃ無理だから…」 「どうしたら……じいちゃんになってくれる?」 「……夏は、特別だから……夏の願いなら、何でも聞いてあげたいけど……それはちょっと……難しいと思う」 どこかで…… そう出来たらいいなって 思う自分も居る……けど無理だ 「……じゃあ……何歳ならいいの?」 「……え?」 「何歳までなら、生きててくれるの?」 「そんなの……どんな会社に就職するのかも分かんないんだから、分かる訳ないだろ?」 給料のいい会社なら、早めに返せるかもしんないけど 「ご飯支度する」 突然話をやめて、夏が俺から離れた 多分……また喧嘩になるからだ 俺もソファーへと座る 矛盾してる 早く死にたい けど、夏と居たくて すぐ死ぬくせに 夏を自分のものにしたくて 夏と居たいなら 長く生きなきゃ でも…… 俺は…… 毎日鏡を見る度、早く消したくなる 父さんの顔なんて知らないけど 自分の顔が1番の手がかりだから 「ちょっと忘れ物。買い物して来る」 夏が、そう言って出て行く その後ろ姿を見ると ……ざわっ !! どうしよう 夏…… バタン どうしよう 今…… 夏…… 怒ってる…かもしれない 都合のいい時だけ…… ざわっ 「はぁっ……はぁっ」 ざわっ !! 夏! 待って!! 走ってドアを開ける 「雪?」 振り返った夏に抱き付く 「夏!お願い!お願い!行かないで!!」 今……1人にしないで! 「大丈夫。行かないよ、雪。大丈夫」 夏がぎゅ~っと抱き締めてくれる ほんとは…こんな事して貰える状況じゃなかったのに…… でも…… 1人では堪えられない 「夏……どうしよう……どうしよう……」 「大丈夫。ちゃんと居るから、大丈夫」 「夏……ごめん……夏……ごめん」 「謝んな。大丈夫だから。大丈夫」 夏が力いっぱい抱き締めてくれてるのに どうしようもない不安 不安って言葉じゃ収まらない恐怖 どんなに力強く…… 夏のどこに掴まっても安心出来る場所が見付からない 「~~~~っ…夏っ…なつ~~…」 「大丈夫。雪。俺ちゃんと居るよ」 「ごめんっ……うっ……分かんなっ…」 「いいよ。分かんなくてもいいよ。大丈夫」 しばらくすると 何をするでもなく いつもと同じ様に落ち着いてきて 疲れ果てた俺は、いつも通り寝てしまって 多分…… 夏は……俺の汗だくの体を拭いてくれるんだろう 夏は…俺の事…… 家族をなくした可哀想な奴で…… だから…… 親代わり……みたいな……兄ちゃんみたいな…… どんなに……関わりたくない時でも……
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