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「また俺かよ」
学生寮の部屋の中、クラスメイトがうんざりしたように声を上げた。
俺が通う高校には量があり、生徒の三分の一程がその寮に在籍している。
規律はそこまで厳しくないが、もちろん夜間は外出禁止。とはいえ、育ち盛りばかりがいるのだ。時には寮母の目を盗んで、こっそり買い出しに行くこともある。
買い出し係は主にあみだくじで決めるのだが、夜間の内緒の外出に限って、一人の寮生がその役になることが多い。
「公平なくじの結果だ」
「運のない自分を呪え」
みんなはそう茶化すけれど、多分アイツのくじ運のなさは運じゃない。
書き込まれた名前からあみだくじを辿り、もう少しでゴールに到達する。その時、あいつの番に限って、くじの線が浮いたり消えたりするのだ。
結果、夜間外出の際は、必ずあいつがその係になる。
線の増減には誰も気づいてないらしく、このことを知っているのは俺だけ。でも、誰かに話しても信じてもらえそうにないし、そもそも、どうして線が出たり消えたりするのか判らない。
ただ、夜間という時間帯に、どうしてもあいつを外に出したい何かがいるのは確かだ。
もしものことがあったらじゃ遅いので、やっぱり本人にはこのことを伝えるべきだろうか。
でも、信じてくれるかな。
それこそ、俺はどう行動すればいいかを、くじで決めようかと思うよ。
あみだくじ…完
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