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「キャロライン。君とそこにいる彼女の関係がわかって良かったよ。そろそろ、新聞部の部長に決闘を申し込もうかと思っていたところなんだ」 「決闘ですか? 一体全体どうして?」 「そりゃあ、自分の好きなひとが自分には素っ気なくなって、見ず知らずの男子生徒に声をかけている様子を目撃したら焼きもちくらい焼いて当然だろう?」 「焼きもちでひとを殺しかけるの、やめてもらえます? 普通に迷惑なんで。あと、わたし女ですから。いくら新聞製作中は作業着とはいえ、この美少女を男と見間違えるとか、目が腐ってません? それからキャロラインさま、どうして不思議そうな顔をなさるのです?」  小首を傾げるキャロラインに、少女が声をかけた。 「アンドレアスさまと物騒な発言がいまだにどうにもしっくりこなくて。彼はとても礼儀正しくて、落ち着いているでしょう?」 「先ほどの、女生徒たちへの対応を見てまだそんな寝ぼけたことをおっしゃっているんですか。この男、狂犬ですよ」 「いやあ、犬扱いは困ったな」 「とりあえず、狂犬を躾けるのは飼い主であるキャロラインさまの役目です。他のひとに危害を加えないように、しっかり首輪とリードをつけておいてくださいね。あとそろそろ、わたしも帰っていいですか?」 「ああ、迷惑をかけてすまないね。明日優勝したら、独占インタビューに応じるから」 「言質取りましたよ。絶対ですよ。絶対ですからね!」  痴話喧嘩に巻き込まれて疲れを見せていたはずが、新たな特ダネの予感に顔を輝かせて、部長は足取り軽く出ていくのだった。
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