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「アンタ、いい加減にしなさいよ」 「だから、あたしは絶対に大聖女になんかならないって言ってんの」  国境沿いの山の中、今日もまた聖女シンディと彼女の守り役である神官レイノルドが言い合いをしていた。それを初めて見る村長たちはおろおろとしているが、旅の同行者たちは慣れたもの。今日もまたふたりでじゃれているのかと笑いながら眺めているばかりだ。 「やっとこさ、けじめがついたのよ。これで憧れの王都に帰れるじゃない。それに巡礼の功績が認められて聖女の格も上がる。一体何が不満なのよ」 「あたしの生きる道はここにあるの。勝手にあたしの将来がどうとか言わないで」 「アンタの仕事ぶりが中央神殿で評価されたっていうのに、本当に天邪鬼な子ね。あんなに帰りたがってたくせに」 「一体いつの話をしているのよ。あれから何年経ったと思ってるわけ? 考えが変わるには十分すぎる時間が過ぎたわ。あたしはこのまま巡礼の旅を続けてやるんだから!」  聖女は可憐な見た目からは想像できない大声をあげると、わざと足音を立てながら村の祠に祈りを捧げに向かう。神官は、やれやれと頭を振ると大げさに肩をすくめつつ彼女の後を追った。
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