Prolog

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「そうですけど、まだ、寝惚けてます?」  名前を確認されたから私がまだ寝惚けていると思ったらしい彼。  確かに、まだ若干頭が起きていない状態ではあるけど、決して寝惚けてなどいない。  私が確認したのは、普段見ている彼と今目の前に居る彼が別人のように見えたからだ。 「あ、喉乾きましたよね? 今、水持って来ますね」 「う、うん……ありがとう……」    そう言って小鳥遊くんは冷蔵庫の方へ歩いて行く。  そんな彼を目で追いつつ、そもそもここはどこなのかと辺りをキョロキョロと見回してみる。 (ここは、一体?)  かくいう自分はベッドの上に居て、水を取りに向かった小鳥遊くんはベッドから少し離れた場所にある冷蔵庫の前。  そして他にはテーブルやソファー、テレビにマッサージチェアなどがあり、どこかの部屋の中だという事が(うかが)えるのだけど、問題はここが誰の部屋かという事だ。 (……もしかして、小鳥遊くんの部屋?)  当然、自分の部屋でないなら真っ先にそう結論付けるかもしれないけれど、それにしては何というか、少し違和感がある。  それと言うのも私が居るベッドは妙に大きめだし、男のひとり暮らしにしては少し可愛げのある内装だから。 (待って……ここって、もしかして)  こういった雰囲気の部屋に覚えのあった私の脳裏にある仮説が浮かび上がる。  そう――ここが、ラブホテルの一室なのではないかという当たって欲しくない仮説が。
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