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「――っんん、……ふ、……あ、……っ」  急に唇を塞がれたと思えば、激しい口付けが私の思考を鈍らせる。 「……ん、……や、……はぁ、……っんん」  息つく暇も無いくらいに何度も角度を変えながら唇を奪われ、その激しさに立っているのもやっとな私は解放して欲しいと力を振り絞って手で彼の胸を叩いて訴えかける。  それに応えてくれたのか、それとも満足したからなのか、ようやく唇を離してくれた小鳥遊くん。  いつの間にか彼の手が背に添えられていて、彼に支えられる形で私は身体を預けていた。 「……はぁ、はぁ……。どうしていきなり、こんな事するの?」  息を整えつつそう問い掛けた私は彼から離れようとするも、彼はそれを許してはくれず、離れられない。 「そんなの、決まってるでしょ? 面白くないからですよ。俺が今先輩の目の前に居るのに、北澤先輩の事なんて考えるから」 「だからそれは、別に北澤の事がどうって訳じゃなくて、小鳥遊くんが、変な事言うから……」 「ほらまた」 「え?」 「何度言えばちゃんと呼んでくれるのかな? 名前」 「あ……」 「名前で呼んでって言ってるのに、全然呼んでくれない。別に会社の皆んながいる前で呼んでって言ってる訳じゃないのに……そんなに難しい事ですか? 俺を名前で呼ぶの」 「それは、だから……」  そもそも名前の事だって、強引に小鳥遊くんが決めただけで私は良いなんて言ってない。  だけど、そんな事を言ったところで小鳥遊くんが納得するとも思えない私は反論するのを止めた。 「……愁、くん……お願いだから、とりあえず離して……」 「嫌です。俺は離れたくない」 「こんなところで、いつまでもこうしていて誰かが来たりしたら……恥ずかしい……」  いくらマンションの裏手とは言え、誰かが来ないとも限らないし、窓から住人の人に見えてしまうかもしれない。  とにかく今は彼から離れたい私が何度かお願いすると、 「……先輩のお願いばかり聞くのも面白く無いので、一つ俺のお願いも聞いて貰えますか? そうしたら、この場は離れます」  交換条件なのか、自分のお願いも聞いて欲しいと口にした。
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