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駄目、離れなきゃ。そう思うのに、気持ちいいと思ってしまった私は離れる事が出来ず、ただひたすら小鳥遊くんのペースに飲まれていく。
「んん、……ふぁ、……ッん」
徐々に身体の力が抜けていくのを感じた刹那、足に力が入らなくなった私はその場に崩れ落ちそうになる。
「――っと、そんなに気持ち良かったですか?」
寸前で小鳥遊くんに身体を支えられ、顔を覗き込みながらそう問い掛けられる。
「……ちが、……そんなんじゃ……」
息を整えながら否定の言葉を口にするも、言葉と表情が合っていなかったらしく、
「そんな艶っぽい表情で否定されても、信用出来ませんよ。俺としては、もっと素直になって欲しいな。そうすれば、今よりももっと、気持ち良くさせてあげるのに」
嘘を見破られた挙句、すました顔でとんでもない発言をしてくる小鳥遊くん。
「……そんなの、いらない……いいかげん、はなして……ッ」
いつまでも外でこんなやり取りをしていたくない私は何とか離れてもらおうとお願いすると、
「……約束ですからね、離れますよ。それじゃあそろそろ車に戻りましょうか」
意外にもあっさり承諾した小鳥遊くんは、私から離れると駐車場の方へ向かって歩きだした。
あまりにもあっさり離れていくから呆気にとられていた私だけど、「先輩? どうかしましたか?」と声を掛けられた事で我に返り、急いで後を追いかけた。
そして車に乗り込むと特に何事も無かったかのようにマンションを後にすると、当初の予定だったコンビニまで送ってくれた。
「……送ってくれて、ありがとう。お夕飯、ご馳走様でした。それじゃあまた」
シートベルトを外してお礼を口にした私がドアを開けようと手を伸ばすと、
「――やっぱり、先輩の自宅前まで送ります。場所、教えてください」
その手に自身の手を重ねてドアを開けるのを阻止してきた。
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