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(だったら友人関係とか? 一回セックスしといて? 確かに美濃羽は悪い人ではないけど……まぁ良い人でもないけど)
友人関係は恐らく無理だ。先ほどの流れはどうにかなったが次に同じような事をされればまた流される自信は無駄にあるしそうなると友人関係なんてすぐに破綻する。だったらセフレと割り切って付き合うのか……どう控えめに考えても自分が痴情のもつれで刺される可能性が否めない。
うんうんとそんな事を悩みつつお湯に浸かって体をしっかりと温めた後、脱衣所に出れば待ち構えていたように美濃羽が立っていた。
「……っ!?」
思わず体が硬直する。こんなところで襲われればひとたまりもない。
「イーチカちゃん? おいで」
すっと、バスタオルを持った長い両腕を広げて美濃羽はこちらに来いと指示をする。あまりにも思っていた展開と違い目を白黒させながらそろそろと近寄れば、至極丁寧に体を拭かれた。
(なに、これ)
いつの間にか洗濯から乾燥までされている昨日脱いだ下着や服を着せられ、昨日と全く同じ格好にさせられる。
それから丁寧に髪を乾かしてもらい、普段さぼりがちなスキンケアもばっちりとしてもらう。
(なに……これ)
思考を放棄している間に、イチカは美濃羽の手によってつやつやピカピカの見事な状態に仕上がった。
(なんだこれ……)
そんなつやつやピカピカな状態で食卓に運ばれ、眼の前には美濃羽が作ったであろう美味しそうな朝食が並んでいる。意外なことに和食である。
「って、なんなのよ!! この状況ーーー!!」
「え? 何が」
「え? 何が? じゃない! すごいお世話されてるのなんで!?」
普通に意味が判らなすぎて思考が止まっていた。
「口に合わなかった?」
が、美濃羽があまりにも曇りのない眼で見てくるものだからこれ以上何かを突っ込むのもバカバカしい気がして大人しくならざるをえない。
いただきますと合掌し、取り敢えず朝ご飯を食べる。
「美味しいです……」
作ってもらったご飯は最高に美味しかった。大学から一人暮らしになった為自炊はしているが明らかに自分よりも美味しい。
炊き立てのご飯に卵焼き、焼き魚とお浸しにみそ汁。特別なものがあるわけではないが自分で作ろうとは到底思えないラインナップ。
「……美濃羽も十分おもしれぇ男枠だけどね」
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