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「そう? それよりもさ、イチカちゃん今日時間あるなら出かけない? そういう服装とかが好きなら別に自由だとは思うけどあんまりイチカちゃん好んでるわけじゃなさそうだなって思って」
食べていた手を止めて、イチカは美濃羽を見る。本当に良く良く人を見ている人だと思った。確かにただの屑なら彼中心に人は集まらないだろうし、顔が良いだけならとっくの昔に刺されていることだろう。
「……好んではないけど、何を好きになれば良いのか判らないし……急に変えたら変だって思われるのも恥ずかしいし」
これは、正直な気持ち。貫き通してきた意地ではないけれどこれまで培ってしまった自分が今だ。それを言えばくつくつと美濃羽が笑う。
「なに……」
「いいんじゃない? それは普通のことだし。急に変えるなんて誰でも恥ずかしいでしょ。だからオレを利用してもいいよ」
「……それは、つまり?」
「付き合ってるふりとか。君が自分を変えれたと思ったらそれで終わりでもいい」
確かに何も無いよりは不自然感も唐突感もない。美濃羽がこういうのが好きだといえばそれで済むのかもしれない。
「……えっちなことはしない?」
「するに決まってるじゃん。何も見返りなくオレが動くと思う?」
あからさまな物言いに、イチカは虚をつかれた。言われてみれば当たり前なのだ。先ほどだってそういう事を言っていた。腑に落ちる理由以外何ものでもない。ただ、えっちな事は正直にやぶさかではないと思ってしまう自分もいた。
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