うちに来ない?

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うちに来ない?

 イチカはぐったりとして、少し小洒落たカフェでランチを食べる。身に纏う格好は朝とは違い、膝丈のフレアスカートにシンプルだが可愛らしさもある七分丈のカットソー。化粧っ気のなかった顔にはばっちりとメイクが施されている。靴に関しては流石に歩きを考慮してスニーカーで勘弁してくれと訴えた。とはいえ可愛らしいローヒールのものを一つ別で買った。  いや、買ってもらった。不本意に。  本日イチカが購入したあれやこれやそれやの一式は美濃羽が嬉々としてイチカに買い与えたものである。勿論イチカだって必死に抵抗したがあまりの財力の差を見せつけられ出世払いだと約束を取り付けるのが精一杯だった。  そうして今に至り、結果的にイチカはぐったりとしているのである。 「疲れた?」 「どっちかっていうと気疲れなんですけど? バイト代出たら絶対に払うから!」 「えー、要らないのに。WIN WINでしょ。オレは可愛い女の子を連れて歩ける、君も好みの格好が出来る。なにが不満?」 「貢がれる行為」 「あぁ……まっじめー。イチカちゃん」 「美濃羽が不健康なんだと思う」 「不健康。不真面目じゃなくて?」 「そう、もしくは不健全」 「不健全。まぁそうかもね」 「お金の使い方がおかしいんだもん。あの金額を全部おごろうとするって真っ当じゃないよ」 「投資ってそういうもんじゃない?」 「私に投資してもしょうがないでしょ。甘やかされるのも慣れてないし、慣れたらすごい物欲モンスターになりそうでそれも嫌」  自慢ではないが今まで質実堅実に生きてきたのだ。ランドセルも服もおさがりだったけれどそれは両親がどうせ大きくなるし汚すんだから新品じゃなくても良いじゃないという乱暴な考え方からであり、他の事は不自由はさせられていない。 「誤解してるから言うけどさ、オレはイチカちゃん以外にはお金使わないし、君をバッカみたいにどろどろに甘やかしたいんだけど」 「へぁ?」  ものすごく、間の抜けた声が出た。 「で、でも……あの」 「そうやって気を遣ってくれるのはイチカちゃんが良い環境で育ってきたからっていうの はすごい判るけどね」
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