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お金でしか甘やかせる方法を知らないその環境を可哀そうだと思う義理はイチカにはない。ないけれど、自分がどんどん足利美濃羽に落ちている気がする。たった一日でこんなことあり得るだろうかと自問自答するが実際こうなっているのだから仕方がない。
「美濃羽は、結婚詐欺師に向いてると思うよ」
「おっとぉ? とんでもないセリフ来たけどどうしてそうなったの?」
すっと、美濃羽の頭に手を伸ばして。髪型が崩れないように気は遣うけれどそろりと撫で る。すると、まるで猫のように美濃羽が摺り寄せてきた。
(かっわ……えぇ……可愛いっ!)
「うち、くる?」
かと思えば色気をたっぷり出して誘ってくる。これは、そういうお誘いだ。心臓がドキドキと早鐘を打って全身が熱く火照ってくる。騙されていたらどうしよう、頭の隅でそんなことを考えるのに本能がそんな事はどうでも良いと訴えかけてきた。
(私は、美濃羽のことが……好きなの?)
初恋だってまだな自分にはそれが判らない。けれど明確に一つだけ確かなものがある。
この男が欲しいという感情だった。こくりと無意識に喉が鳴る。
「だめ。だって、私昨日から一回も家に帰ってないし」
「……一人暮らしなのに?」
「うん。だから――美濃羽が……うちにこない?」
・・・
玄関のかぎを開けて、中に入った瞬間美濃羽に抱きしめられる。
「ちょ、待って……ここ玄関――んっ」
振り向いた瞬間、吐息から奪う様に口づけをされる。ぐっと腰を引き寄せられ密着しながらも図体のでかい男はやや前かがみになりイチカの唇を甘噛みする。服の隙間からするりと手が侵入してきてブラの上から揉みしだく。態勢が少し苦しいと訴えれば、それもそうかとつぶやいて、美濃羽はイチカを横抱きにした。
靴を脱がされ玄関にぽいと捨てられると、傍から見ていても判るほどに上機嫌に室内へと上がり込んだ。遮光カーテンをしている部屋の中は薄暗く、それでも外の日の光が隙間から漏れている。あぁ、そういえばまだお昼を少し過ぎたぐらいの時間帯だとぼんやりと思う。
「カーテン開ける?」
「やだっ、変態」
「冗談だって……口開けて」
ベッドに優しく降ろされて押し倒される。美濃羽の首に手を回し引き寄せながら口を開ければにやりと笑い、かぶりついてきた。
「ふっ、ん、はぁ」
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