77人が本棚に入れています
本棚に追加
「順番いきなり吹っ飛ばしてこないでよ……」
「それかもう一回しよう!? 勃ちそう!」
「全然条件になって無い! そもそももう体力ないから駄目! それにお腹空いたし」
「あーーー、もうなんかすごいキュンキュンする。結婚しよ? 幸せにします」
ぶっ飛んだ発想からぶっ飛んだ発想へと良く行くものだと感心しながら美濃羽の服を投げ渡す。会話が恋人同士のそれではあるがイチカはあまり気にしていない。
(まぁ……冗談なんだろうけど)
気にしていないというよりは本気にしていない、冗談だと思っているのが原因だろう。美濃羽がべたべたに甘やかそうとしてくる事は理解できるけれど、いまいち本心がつかみかねないのもある。
「イチカちゃん?」
「あ、ううん。おなかすきすぎてぼーっとしてた」
「くっく……そんなに? じゃあ早い所行こうか」
ごく自然と手を繋いでくる美濃羽に、ドギマギしながら家を出た。
・・・
マンションの外で連絡の取れない幼馴染を心配して来た桜庭祐一は、ただ呆然と立ち尽くしていた。ただならぬ雰囲気でエントランスから出て来た美濃羽とイチカを見かけ、口を開けたまま驚き硬直している。
声を掛ける事も出来ずとっさに電柱に隠れて、顔面蒼白で二人の様子をガン見している。どう見たって不審者のそれではあるが当人にはその自覚はない。
「な……なんで足利と一緒にいるんだよ……しかも手なんて繋いで、恋人同士みたいに……」
格好だってよくよく見ればいつものような男みたいな恰好ではなく女性らしい服装になっている。その瞬間、祐一の頭の中に廻ったのは騙されているんだという認識だ。
とはいえ、桜庭祐一には今この場で邪魔をしに行く勇気なんてさらさらにない。それゆえに、謎に責任感だけ駆られ踵を返して自宅へと戻っていくのだった。
最初のコメントを投稿しよう!